【インタビュー】映画『ソウルフル・ワールド』ピート・ドクター監督 ダナ・マレープロデューサー「普通の日々のちょっとした瞬間にも美しいものはたくさんあります」

2020年12月29日 / 07:00

 ジャズ・ピアニストを夢見る中学教師のジョー・ガードナー(声・ジェイミー・フォックス)は、マンホールに落ちてソウル=魂の世界へ入り込む。ジョーは、地上へ戻る方法を探るため、人間になることを拒み続けるソウルの22番と共に冒険の旅に出る。ディズニー&ピクサーの最新作『ソウルフル・ワールド』が、12月25日からディズニープラスで配信された。本作のピート・ドクター監督とプロデューサーのダナ・マレーに話を聞いた。

『ソウルフル・ワールド』ピート・ドクター監督

-『リメンバー・ミー』(17)、『2分の1の魔法』(20)、そしてこの映画と、最近のピクサー作品は、生と死、生者と死者とのかかわりを描いたものが続いています。また、『トイ・ストーリー4』(19)のジョシュ・クーリー監督は「ウッディが『メンター=師』の役割を果たしている」と語っていましたが、この映画にもメンターが登場します。こうした共通性は、偶然ではなく意図的なものなのでしょうか。

ピート 興味深いことは、ピクサーで作る全ての作品は、僕たち作り手の人生が反映されたものになっていることです。ですから、そうしたテーマを意識していなくても、自然とそうしたものが浮かび上がってくるのでしょう。たとえ、出てくるのがモンスターであっても、魚であったとしても、それは、僕たち自身のことなんです。自分たちが体験したことがもとになっていることが多いのです。この映画も、僕自身が「なぜ自分はここにいるのだろう」「残された時間で自分は何をするべきなんだろう」と考えたところから始まっています。

-共同監督のケンプ・パワーズさんの人生が、主人公ジョーのキャラクターに反映されているそうですが、では、22番のユニークなキャラクターはどこから生まれたのでしょうか。

ピート それはダナじゃないの(笑)。

ダナ 確かに『インサイド・ヘッド』(15)の「嫌悪」のキャラクターは私がモデルですが…(笑)。22番のキャラクターは“みんな”からできていると思います。私も、人生の中で「何をしたらいいんだろう」「これからどこへ行ったらいいんだろう」と悩むことがありますが、そうした気持ちが22番に反映されているのだと思います。そして、誰もが彼女のように、「自分は生きる価値があるのだろうか」と悩むことがあるので、そういう気持ちも体現しているのだと思います。ですから、子どもたちが見ても、感情移入ができるキャラクターになっているのです。ジョーに関しては、ケンプはもちろん、ピートや他の人の体験も入っています。

『ソウルフル・ワールド』ダナ・マレープロデューサー

-この映画のターゲットは?

ダナ それは家族全員です。ただ、果たして全員に届くのか、という心配はあったので、『インサイド・ヘッド』のときもそうでしたが、ピクサーのスタッフの子ども(100人から150人ぐらいで、4歳から20歳ぐらいまで)を集めて試写をしました。見てもらった後で、感想を聞くと、5歳児でも、映画の中で起きたことを理解していました。私たち大人は、子どものことを見くびりがちですが、彼らは、私たちよりもはるかにこの映画のことを理解してくれました。さすがに、ジョーが抱いている年齢的な危機感は子どもには分からないと思いますが、それ以外の部分は、もちろんビジュアル的な助けもありますが、ちゃんと届くのだと思いました。

-『インサイド・ヘッド』では人間の内面=脳内を描き、今回はソウル=魂でした。こうしたアイデアはどこから浮かんでくるのでしょうか。また、『幽霊紐育を歩く』(41)やリメークの『天国から来たチャンピオン』(78)、あるいは『素晴らしき哉、人生!』(46)といった同種のクラシック映画の影響はあるのでしょうか。

ピート アイデアがどこから湧いてくるのかは僕にも分かりません。もし、分かるところがあるなら、そこに行きたいぐらいです(笑)。また、昔の映画などからアイデアを得ることはありませんが、企画が生まれた時点で、同じようなテーマを持った作品を見ることはします。今回も、今あなたがおっしゃった『天国から来たチャンピオン』や『素晴らしき哉、人生!』、それから『あなたの死後にご用心!』(91)、シャーリー・テンプルの『青い鳥』(40・日本未公開)を見ました。それらを見ながら、「何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか」という点を参考にしました。

 
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