【インタビュー】「Op.110 ベートーヴェン『不滅の恋人』への手紙」一路真輝「新しい世界の舞台をみんなで体感しましょう」

2020年11月4日 / 12:00

 ベートーベンの音楽から生まれた舞台「Op.110 ベートーヴェン『不滅の恋人』への手紙」が11月28日から上演される。「ピアノソナタ作品第31番 Op.110」は、ベートーベンが愛した、一人の女性に捧げた曲だと言われている。本作では、その逸話を基に、ベートベンと不滅の恋人アントニーとの禁断の恋、真の芸術を巡る物語を、時間と記憶をさかのぼりながら作り上げる。本作でアントニー・ブレンターノを演じる一路真輝に、ベートーベンやアントニーへの思いを聞いた。

アントニー・ブレンターノ役の一路真輝(スタイリスト:江島モモ/ヘアメイク:熊田美和子)

-ベートーベンとその恋人だったとされるアントニーのエピソードを軸に描いた作品です。出演が決まった気持ちを聞かせてください。

 史実的には、ベートーベンとアントニーが実際に恋人だったのかも確定されているわけではなく、いまだにミステリーな点も多いのですが、今回は、小熊節子さんが原案を出されて、不滅の恋人であったという前提で作られています。小熊さんはウィーンの作品を日本で上演される際にコーディネーターもされている方で、以前から親しくさせていただいています。私は(2000年から2006年にかけて上演されたミュージカル「エリザベート」で)オーストリアのエリザベート皇后を6年間にわたって演じていたのですが、そのときには年に1回はウィーンを訪れ、小熊さんにウィーンを案内していただいていました。そういったご縁もあって、今回、アントニーを演じさせていただけることは何かの巡り合わせを感じていて、すごく幸せに思います。

-ベートーベンについて描いていながら、ベートーベンは一切ステージには出てこないという、特殊な構成になっている本作ですが、それについてはいかがですか。

 台本を読んで「こうきたか!」と思いました(笑)。ベートーベンが出ないことは事前に聞いていたのですが、どうやって作るのだろうという疑問もありました。でも、実際に台本を読んだらワクワクしました。ただ、演じる上では、アントニーの情熱や、盛り上がる恋心をどこに向けたらいいのだろうという不安はあります。愛を語る相手がその場にはいないわけですから。(稽古前の)今、夜寝られないぐらいです(笑)。なので、そこは(本作の演出の)栗山(民也)さんのお力を存分にお借りして、まずは栗山さんが作ろうとされていることに身を委ねてみようと思っています。

-音楽・演奏は新垣隆さんが担当します。本作では、新垣さんの奏でるピアノがベートーベンの存在を表すものになると思うので、音楽の比重がかなり大きな作品になるのでは?

 なると思います。台本では、1台のピアノを役者たちが囲むと書いてあるので、新垣さんがベートーベンであるかのような立ち位置になるのではないかと、私も想像しています。それに、今回はベートーベンの音楽に歌詞を付けて歌うというシーンもあるんです。なので、お芝居と音楽の融合、その間に役者が歌うという新しい世界をお見せできると思います。今回、私も歌わせていただきますが、田代(万里生)くんが「第九」を歌うシーンも出てきます。きっと彼は素晴らしい歌声を聞かせてくれると、私も楽しみにしています。

-演じるに当たって、アントニーの魅力はどこにあると思いましたか。

 アントニーは、貴族の家庭から実業家に政略結婚によって嫁ぎ、子どもを産む道具と言われて、心が乾いてしまったところでベートーベンと再会します。アントニーにとってベートーベンは、心を埋めてくれる大きな存在ですが、恋にまい進せず、ベートーベンを、そして家族を守ろうと、冷静さを持ち続ける姿には、彼女の強さを感じてすてきだなと思いました。

-では、そのアントニーとベートーベンの恋についてはどう感じましたか。

 台本の中では、アントニーが17歳のときに、初めてベートーベンと出会います。そのときに、お互いにほのかな恋が芽生えていたのだとしたら、10年たって再会したときに、燃え上がってしまったのも仕方ないことなのかなと思います。アントニーにとって、ベートーベンとの恋は人間同士というより、魂の恋だったと思います。芸術というフィルターを通して2人の魂が引かれ合っていた。そこにはもう現実は見えていなかったような。心の安らぎと刺激の両方を、お互いに強く求めたのだと思います。

-劇中では、アントニーの夫フレンツ・ブレンターノを含めた家族の関係も描かれていますね。

 現代の感覚からすると「どうしてそうなるの?」と思うような展開もありますが、当時の貴族社会ではあり得たことなのかなとも思います。例えば、エリザベート皇后も夫の相手をしたくないという理由で愛人をあてがったりしていました(苦笑)。うがった見方ですが、体裁が一番大事だという価値観があったのかなとも想像します。そこも含めて、今回、栗山さんがどのように作るのか、ドキドキワクワクしています。

 
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