【インタビュー】コロナ禍で生まれたホリプロの新プロジェクトがスタート「芸術活動が止まってしまうことだけは絶対に避けたい」

2020年8月26日 / 12:00

 新型コロナウイルスは、今なお、演劇界に大きな影響を与えている。3月から数々の舞台・ミュージカルが中止になり、現在も、さまざまな感染拡大防止策が取られた中での上演となっている。そんな中、数々のオリジナルミュージカルを生み出してきたホリプロが、新たなプロジェクトを立ち上げた。その名も「ミュージカルクリエイタープロジェクト」。同プロジェクトは、才能豊かなクリエーターを発掘し、オリジナルミュージカルの創作を目指すもので、音楽部門と脚本部門を創設して多くの応募者を募っている。プロジェクトを企画運営する、ホリプロ・公演事業部の井川荃芬氏と柳本美世氏に、ミュージカル制作の魅力やプロジェクトへの思いを聞いた。

ミュージカル「100万回生きたねこ」2015年公演から(撮影:渡部孝弘)

-今回のプロジェクトが発足するに至った経緯を教えてください。

井川 ホリプロでは、オリジナルコンテンツを世界に向けて発信していきたいという思いが数年前からありました。それに伴い、「デスノート THE MUSICAL」や、ミュージカル「100万回生きたねこ」などのオリジナル作品を作ってきました。しかし今、新型コロナウイルスの影響で軒並み、公演が中止・延期となってしまったことを受けて、私たちが持っているコンテンツで何かやれないかと考えたときに、このプロジェクトへと結びつきました。

-今回、「ミュージカル」と銘打ち、音楽にこだわったプロジェクトになったのはどういった思いからでしょうか。

井川 弊社でもストレートプレーの作品も多数上演していますが、日本の演劇界はオリジナル脚本のストレートプレーを作り上げることには長けていると思うんです。実際に、さまざまな劇団、会社が数々の素晴らしい作品を上演しています。しかし、ミュージカルは海外から権利を買って上演するのがスタンダードです。オリジナルのミュージカル創出はまだまだこれからだと思っています。弊社では、東宝さんとともに、韓国の演目である「フランケンシュタイン」を、日本で初演、再演を上演させていただきましたが、そのとき、同じアジアの隣国で作られたオリジナルミュージカルの力を間近で感じ、日本でも、もっともっとミュージカルは成長できるのではないかと感じました。

-なるほど。では、舞台・ミュージカル制作の魅力はどこに感じていますか。

柳本 私も井川も、プロデューサーという立場で制作に携わっていますが、私たちは初めの足場を作るのが役割です。そこから、プランナーの方々、脚本家、演出家といった多くの方たちが栄養を与えて育ててくださいます。私たちは、柱となるものを用意することしかできませんが、それがどう育っていくのかを一番間近で見ていることが何よりも楽しく、面白いです。思いがけない相乗効果が生まれて、私が考えていた以上の素晴らしい作品になることもあるので、そういった驚きも魅力です。

井川 特にオリジナル作品は、作り上げる過程の楽しさが格別です。クリエーターさん同士の組み合わせによっても、全く違う色の作品になるので、どなたにお願いするかということも重要で、それが楽しいところでもあります。そうして作り上げたものが、最終的にお客さまのもとに届き、お客さまからのエネルギーを感じることもこの仕事の醍醐味(だいごみ)です。やはり、演劇はお客さまに見ていただいて完成するものなのだと感じます。

-逆に、つらいことや苦しいことは?

柳本 今はやはり、新型コロナウイルスの影響で、お客さまが劇場に来ることをちゅうちょする状況にあるということですね。

井川 演劇を届けたいけれども、これまでと同じようには届けられない。演劇が大好きなお客さまもなかなか見ることができないという状況には、私たちももどかしさを感じています。「ミュージカルクリエイタープロジェクト」は、そういった現状を受けて立ち上げたものでもあります。今、クリエーターの方たちも出したくても出す場所がないという状況に陥っていると思います。それならば、何かを表現できる場を提供できないかという思いがあったんです。

柳本 きっと若い人たちの中には、今のこの舞台業界を見て、この先は厳しいだろうからと、辞めようと思っている人もいると思います。それは、数年後、数十年後の才能がどんどん減っていってしまうということで、演劇界にとっては大きなマイナスです。今回のプロジェクトによって、「チャンスがあるなら続けていこう」と少しでも思ってもらえたらいいなという気持ちもあります。

 
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