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【インタビュー】映画『シグナル100』小関裕太 デスゲーム映画に歓喜「ようやく好きなジャンルに携われる」

 “かわいいイケメン”で朗らかな性格、たまに繰り出す天然発言などで人気を集め、ドラマ「ごめんね青春!」で演じたトランスジェンダーの男子高生・村井守役や、連続テレビ小説「半分、青い。」でのアメリカ育ちの陽気な青年・健人役同様のほんわかしたイメージを持たれている小関裕太。しかし、そのイメージとは裏腹に、実は過激な“デスゲーム”作品が大好きだそうで、「ようやく好きなジャンルに携われました」と声を弾ませる…。
 

小関裕太

 突如として、担任教師から、最後の一人になるまで解けない自殺暗示催眠をかけられた36人の高校生たちが、全部で100種類もある自殺を発動させるシグナルを回避しながら、生き残りをかけた恐怖のデスゲームに挑むさまを描いた映画『シグナル100』。

 オファー時の心境を尋ねると、逆に「ご覧になりましたか? どうでしたか?」と前のめりで感想を求めてくる小関。それは作品に対する自信の表れで、過激な描写がありながらも、一エンターテインメント作品として楽しんだと伝えると、「そうですよね。面白いですよね」とほほ笑んだ。

 さらに、「人がバタバタと死んでいくショッキングな作品はスリリングで大好きです。原作のコミックも好きで、オファーを頂く以前に読んでいました」と興奮気味に語り、「過去にホラー映画に出演したことはありますが、今回のように精神的に追い詰められたり、心理戦をしたりする作品はなかったので、ようやく好きなジャンルに携われると思い、うれしかったです」と顔をほころばせる。

 演じる榊蒼汰役は、主人公でクラスメートの樫村(橋本環奈)にひそかに思いを寄せる、サッカー部一のモテ男。原作の中でも好きなキャラクターだったようで、「ミステリアスで、最後までみんなの味方なのか、自分のことしか考えていないのかが分からないし、物語のキーパーソンになる役なので演じがいを感じました」と話すと、「はまり役だと思いました」とも。

 というのも、「変人」と言われがちなAB型のため、人からよく「変わっているね」と言われたり、「部屋も散らかっていると落ち着くときと、きれいじゃないと落ち着かないときがあって、日によってA型になったり、B型になったり、性格が変わったりする」そうで、「ずっと、こういう捉えどころのない役がやりたかったです」と念願だったことを告白する。

 竹葉リサ監督からも「小関くんのままでいてほしい」と言われたため、「自分が体験しているかのように演じれば榊蒼汰になれると思ったし、実際に演じているときは、自分とリンクしているから、体になじんでやりやすかったです」と手応えがあったことをうかがわせた。

 撮影は約3週間、茨城の奥地で泊まり込みで行われた。外界と遮断され、撮影に没頭できる環境に置かれたことで、橋本や瀬戸利樹ら生徒役のキャストをはじめ、竹葉監督やプロデューサー、脚本家と密にディスカッションを重ねることもでき、「映画の世界の中でリアルに生きている感覚」を得ることができたのだとか。

 同世代の役者たちとの関係も良好で、「対抗意識やバチバチした感じはなく、それぞれの役にフォーカスが当たるシーンがあるので、『みんなが主役』という意識を持って結束して臨むことができました」と充実した表情を見せた。

 ただ、普通ではない世界観に浸ることは苦しくもあり、特にシグナルの一つ「涙を流す」を挙げると、「次々と友達が死んでいくから悲しくて泣きたくなるけど、涙を流したら自殺させられちゃうから、泣きたい自分とこらえる自分という葛藤を常に抱えていなければいけないことは精神的に大変でした。肉体的にも、涙は気持ちが緩んだときに流れるから、流さないために体をこわばらせて、息ができないような状態でいたのできつかったです」と打ち明ける。

 そんな映画作りに集中した日々を過ごした小関は、クランクアップと同時に「終わったー!温泉に行くぞー!」と心身ともに一気に解放されたこともうれしそうに伝えた。オンとオフの切り替えが見事だが、5年前のドラマ「ごめんね青春!」の撮影では、「男の子を好きになっていました。いつも隣にいる半田くん役の鈴木貴之くんのことを役者として尊敬しているから好きなのか、男として好きなのかが分からなくなるぐらい、村井そのものになっていました」と役を引きずっていたという衝撃的エピソードを口にする。

 だが、「うそなく、役に没入できたことに胸を張れるし、新しい自分を見つけられました」と役者として一皮むけたことを誇らしげに語ると、「常にあのときの自分を越えようという気持ちを持って臨んでいます」と本作撮影中にも胸に抱いていた思いを吐露する。

 時折、柔和な表情からりりしい顔つきに変わる小関。群雄割拠の若手イケメン枠で、これからどう戦っていくのだろうか…? すると、「自分の中に熱いものは持っています」と闘志をにじませ、「個性的な人が多い中、自分に抜きん出た個性があるかは分からないけど、今、自分なりに自信を持ってこの場に立つことができているので、この自信だけを持っていれば周りに埋もれることはないと思います」と言葉に力を込めた。

 子役からスタートし、舞台、モデル、ドラマ、映画と幅広いフィールドで十分に個性的な活動を続けている小関は、本作での過酷な撮影を通して、さらなる成長を遂げた。そうして常に自分を越え続けている小関なら、ある意味“デスゲーム”が繰り広げられている芸能界でも生き残ることができるだろう。

(取材・文・写真/錦怜那)

(C)2020「シグナル100」製作委員会

 映画『シグナル100』は1月24日から全国公開。

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