【インタビュー】舞台「アルトゥロ・ウイの興隆」草なぎ剛、希代の悪人役に「人生を懸けてやります」

2020年1月2日 / 17:00

 草なぎ剛が、2020年1月11日からKAAT神奈川芸術劇場で上演される、「アルトゥロ・ウイの興隆」に主演する。本作は、演出家の白井晃が、ヒトラーが独裁者として上りつめていく過程を、シカゴのギャングの世界に置き換えた物語に、ファンクミュージックをちりばめた斬新な演出を施す意欲作。白井とは18年上演の舞台「バリーターク」以来、2度目のタッグとなる草なぎに、本作に挑む心境、そして希代の悪人でもあるウイ役の役作りについて聞いた。

アルトゥロ・ウイ役の草なぎ剛

-オファーを受けた際、最初に本作に対してどんな印象を持ちましたか。

 白井さんと「バリーターク」でご一緒したときに、これまでにない新しい感覚があったんです。脚本は読んでも全く分からなかったのですが(笑)、実際に演じてみたらすごく楽しくて。なので、白井さんからまたお声を掛けていただいたことがすごくうれしくて、台本も読まずにやりたいと答えました。今、この作品の台本を読んでいますが…意味が分からないんですよ(笑)。前回もそうでしたが、自分が何の役なのかも分からなくなってくる(笑)。でも、やるしかないので。きっと、自分自身でも知らない扉を白井さんが開けてくれると思うので、未知の自分に出会えると期待しています。

-現在(取材当時)、稽古もスタートしたということですが、実際に稽古を始めてみて苦労していることは?

 せりふの量が膨大なことです。自分でもよくぞここまでしゃべるなと思いながら、(稽古以外でも)ずっと台本を読んでいます(笑)。なので、きっと観客の皆さんにはせりふを話し続ける僕を楽しんでいただけると思います。ウイは浮き沈みの激しい人間なので、叫んで、泣いて、あの手この手で人をだましたり、たくらんだりと、芝居冥利(みょうり)に尽きる役なので、白井さんとディスカッションをしながら楽しく稽古しています。

-草なぎさんは、せりふはどのようにして覚えるんですか。

 ひたすら読みます。台本によって覚えやすいときもあれば、覚えにくいときもあるのですが、今回は比較的覚えにくいので苦労しているんだと思います。演じるウイが僕とはかけ離れているキャラクターなので、それでなのかもしれないです。舞台に出演するときは毎回そうなのですが、稽古をやっていると不安要素がたくさん出てきて、稽古場で「どうしたらいいんだ」って途方に暮れるんですよ。今回も、自分にとって挑戦だと思います。なので、人生を懸けてやります。人生を懸けてやらないとつまらないものになると思うので、フルスロットルで、後先を考えずにやろうと思っています。

-本作でのウイ役をはじめ、最近では、悪役やいい人ではない役を演じることも増えていますね。

 映画『まく子』で演じた南雲光一や『台風家族』の鈴木小鉄は根はいいやつだったんですが、ウイは最悪な人物です(笑)。ジェームズ・ブラウンの曲がかかり、パーティーという形で(悪行が)繰り広げられているので、一見すると悪さはあまり感じないかもしれませんが、やっていることは最悪で、しかも、それを楽しんでいる。でも、そういう悪い人というのは、自分のことを悪いと思っていないと思うんです。それが自分の中のルールになっていて、ただ、自分が信じたことをやっているだけ。なので、僕自身も「勝手に演じちゃえ」と思っているところがあります。いい人というのは、例えば、人のことを敬ったり、礼儀があったりと(万人がこうだと思い描く)“定義”があるけれど、悪い人にはそれがない。正解なんてどこにもないんです。(悪人というのは)コロコロ印象が変わって、時にはいい人のように見えたり、都合が悪くなったら怒鳴り散らしたり、自由に表現できるので、それが悪人を演じる楽しさだと思います。

-役者以外にもさまざまな仕事をされていますが、その中で、お芝居はどんな存在ですか。

 学ぶことが多く、不真面目な自分を正してくれるものなので、学校に行っているような感覚です。つらいことも多いから、本当は嫌なんですよ(笑)。朝も早いし、夜も遅いし、自分の感情とは全く違う感情を表現しなくてはいけないから、僕にとってはすごく大変なお仕事ではあるんですが、ありがたいことに声を掛けていただくので。そうすると、声を掛けてくださった方や演出をしてくださる方がどういう言葉をくれるんだろうって興味が湧いちゃうんです。新しい自分に出会えるような気がして。(役者の仕事は)つらいし、大変なことも多いけど、そこでしか味わえない達成感があるので、やめられない仕事です。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top