【インタビュー】『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』ティモ・ヴオレンソラ監督「マーベルに負けない『アイアン・スカイ・ユニバース』を目指したい」

2019年7月11日 / 10:00

 月の裏側からナチスが攻めてきた! 奇想天外かつ壮大なストーリーで世界中の話題をさらったSF映画『アイアン・スカイ』(12)から7年。待望の続編『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』が7月12日からTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開となる。前作から一転、ナチスとの戦いに勝利した人類は全面核戦争で絶滅寸前。月面でわずかに生き残った人々が、人類の未来を懸けて地球の謎に挑む。果たして、そこに待ち受けるものとは…? 前作に引き続きメガホンを取ったティモ・ヴオレンソラ監督に、作品に込めた思いを聞いた。

ティモ・ヴオレンソラ監督

-前作とは全く違った物語に驚きました。どんなところからこの物語を思いついたのでしょうか。

 前作と同じことはしたくありませんでした。仮に、前作が『スター・ウォーズ』のようなSF作品だとすれば、今回は『インディ・ジョーンズ』や『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』(84)といった、僕の大好きな80年代のアドベンチャー映画風に仕上がっています。最近はそういう作品が少ないので、やってみたかったんです。『ジュラシック・パーク』(93)的な要素もあります。

-前作のラストを引き継いだ「全面核戦争により、人類が絶滅寸前」という設定はかなり痛烈ですね。

 前作のラストを引き継いだのはもちろんですが、月面で生き延びた人々が、地球から逃げてきた人たちに「受け入れる余地はない」と告げるあたりは、現在の難民危機の問題を反映しています。実際にヨーロッパでも、難民の住む場所がないという問題が起きていますから。また、個人的に“終末”というモチーフが好きなのも、こういう設定にした理由の一つです。生き残ったわずかな人々が、危険に立ち向かい、必死に生き延びようとする物語が好きなんです。

-前作同様、ご自身の好きな映画をモチーフやオマージュとしてふんだんに盛り込みつつ、風刺が効いているのが本作の特徴ですが、そこにはどんな思いがありましたか。

 映画作家には声があります。もちろん、僕もその一人です。だとすれば「今、世界がどんな状況にあり、どんな未来に向かおうとしているのか」を伝えるため、その声を使わなければいけない。もっと言えば、地球で生活できなくならないように、警鐘を鳴らすような物語を伝えていくべきではないか。そんなことを考えながら、映画を作っています。

-単なるエンターテインメントではないということですか。

 メッセージ性の薄いアクション映画を作ることもできますが、僕はそれだけでは物足りない。そういう映画は他にもたくさんありますから。せっかく、ハリウッドのスタジオとは一線を画した欧州のインディーズ映画の世界で、自由に映画を作ることができるのだから、社会に警鐘を鳴らすような作品や、建設的な批判精神を持った作品を作っていきたい。大きなスタジオと組むことになれば、どうしても制約を受け、今のように自由に語ることはできなくなります。だから今は、インディーズの映画作家として、自由に楽しくやっているところです。

-その点では、アメリカを中心とした国際政治に対する風刺を軸にした前作に対して、今回は「ジョブズ教」が登場し、IT社会や宗教に対する風刺が込められています。その理由は?

 今回は「宗教」を中心に据えました。宗教の歴史や、今まで宗教がどんなふうに使われてきたのか…。世界を説明するために使われたり、人類の誕生を神話化したり…。それも宗教という枠の中で起きることです。さらに、宗教がどんな未来へ向かうのか、あるいは未来の宗教とはどんなものになるのか…。そういう話題に、ものすごく興味を引かれたので。

 
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