【インタビュー】『貞子』中田秀夫監督 14年ぶりの『リング』シリーズ復帰で原点回帰 「クスリとも笑われなくていい」

2019年6月7日 / 18:35

 そのビデオを見ると、1週間後に貞子の呪いにより殺される…。鈴木光司原作による小説『リング』シリーズは、1998年に中田秀夫監督の手によって映画化されると日本中を震撼(しんかん)させ、以降は“ジャパニーズホラー”の代名詞として、また若手女優の登竜門として、その地位を築き上げてきた。そして、新時代の幕開けとともに、SNSという現代にふさわしいツールを使い、またしても貞子がこの世に解き放たれた。14年の時を経て同シリーズに戻ってきた中田監督に本作に込めた思いを聞いた。

演出中の中田秀夫監督

 顔を覆う真っ黒なロングヘア、そこからのぞくぎょろりとした目、白いワンピースを身にまとい、古井戸やテレビの中からはい出てきて、呪った人間を死へと誘う怨霊“貞子”をモチーフにした本シリーズは、日本だけで7本、ハリウッドでは3本の映画が製作された。

 そのうち、中田監督は『リング』(98)、『リング2』(99)、『ザ・リング2』(05)を手掛けており、以降の『貞子3D』(12/英勉監督)や『貞子vs伽椰子』(16/白石晃士監督)などについて、「あえてコミカルな要素やアクションを盛り込んだり、CGを使ってクリーチャー化したりした貞子は、自分の感覚とは違うけれど楽しんで見ました」と話す。

 さらに、エンターテインメント性の強いそれらは海外のホラー作品に似ているとして、「日本のホラー映画もそういう方向に指針がふれていくのかなとも思ったし、自分ではそれはできないと感じた」とそれぞれの監督たちの手腕に舌を巻いた。

 その中で、「今回は、そういう路線上でやってほしいというリクエストはなかったし、僕がやると失敗するんですよね」と語ると、本シリーズと時間と距離を置き、自身が生み出した『リング』とは毛色の違う作品と出会うことで、「自分が撮るからには、改めて1本目に近い世界観やテイストでやるべきだと思わせてもらいました。だから、クスリとも笑われなくていいです」と原点回帰に至った理由を明かした。

 そして、当時の大ヒットについて、「時代に呼応したからだと思います。テレビとビデオデッキが一家に一台ではなく、子ども一人の部屋に一台ずつ設置されるようになり、それから貞子が出てきて、自分の死を招くかもしれないという恐怖は、突拍子もないけれど、身近に感じられたんでしょうね」と推測する。

 その恐怖は今回、「見たら呪われる」から「撮ったら呪われる」へと変化。SNSが普及し、「子どもがなりたい職業ランキング」で上位に食い込む動画クリエイターが闇へと引きずり込まれる姿は、新たな身近な恐怖として見る者の心に焼き付くのだ。

 とはいえ、ある程度パターン化されることによって恐怖が薄れることに危惧はないのだろうか? 中田監督は、「まったく同じというわけにはいかないので緩急はつけています。ただ、今回の作品のコアな客層がティーンエイジャーだとすると、彼らは『貞子』という名前は知っていても『リング』を見たことがないだろうし、あまりにもJホラーの王道を避けるとホラーファンからそっぽを向かれる可能性もあるので、その辺は慎重にやりました」とコメント。

 続けて、「貞子が井戸から出てくるシーンは意識的に同じようにしました。それは、やるべきルーティンワークだと思います」と言葉をつなげた。

 観客の心をつかむ一端を担うのはヒロインの存在で、前述の作品では、松嶋菜々子、中谷美紀、ナオミ・ワッツが起用され、本作では池田エライザが抜てきされた。中田監督の考えるホラー映画のヒロインは、「戦う男性を盾にするのではなく、自ら前線で人を取り殺すパワーを持つ亡霊と対峙(たいじ)し、その意思の強さが目に宿っている女性」だ。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

丸山隆平「きっと誰も見たことがないものになる」 舞台「water」で挑む半自伝的世界【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月14日

 丸山隆平と、演劇団体マームとジプシーの主宰を務め、劇作家・演出家として注目される藤田貴大が企画し、作り上げる舞台「water」が9月27日から上演される。本作は、丸山の記憶の断片を散りばめながら、藤田の視点で見つけた京都という土地、そして … 続きを読む

倉悠貴 豊臣兄弟を支える軍師・黒田官兵衛を好演中「最後までしっかり演じ切りたい」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年9月13日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=羽柴秀長/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。劇中、軍師 … 続きを読む

安田章大、『髪結いの亭主』の初めての舞台化に「人間たちの退廃感がより響くのではないか」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月9日

 1990年に公開されたパトリス・ルコント監督の代表作『髪結いの亭主』が、安田章大主演で初めて舞台化される。原作となる映画は、一人の男の純粋で偏愛的な恋心を描いたフランス映画の傑作。今回の舞台化では、原作映画を大胆にアレンジし、物語を195 … 続きを読む

【映画コラム】8月の公開映画から

映画2026年9月4日

「ミニオンズ&モンスターズ」(8月7日公開)★★★ 映画のパロディーが満載  最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズがたどり着いたのは、1920年代のハリウッド。西部劇の撮影に乱入したことから映画スタジオに入り込み、人気スターと … 続きを読む

山口馬木也 柴田勝家の最期は「不思議な体験でした」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年8月30日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。8月30日放 … 続きを読む

page top