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そのビデオを見ると、1週間後に貞子の呪いにより殺される…。鈴木光司原作による小説『リング』シリーズは、1998年に中田秀夫監督の手によって映画化されると日本中を震撼(しんかん)させ、以降は“ジャパニーズホラー”の代名詞として、また若手女優の登竜門として、その地位を築き上げてきた。そして、新時代の幕開けとともに、SNSという現代にふさわしいツールを使い、またしても貞子がこの世に解き放たれた。14年の時を経て同シリーズに戻ってきた中田監督に本作に込めた思いを聞いた。
顔を覆う真っ黒なロングヘア、そこからのぞくぎょろりとした目、白いワンピースを身にまとい、古井戸やテレビの中からはい出てきて、呪った人間を死へと誘う怨霊“貞子”をモチーフにした本シリーズは、日本だけで7本、ハリウッドでは3本の映画が製作された。
そのうち、中田監督は『リング』(98)、『リング2』(99)、『ザ・リング2』(05)を手掛けており、以降の『貞子3D』(12/英勉監督)や『貞子vs伽椰子』(16/白石晃士監督)などについて、「あえてコミカルな要素やアクションを盛り込んだり、CGを使ってクリーチャー化したりした貞子は、自分の感覚とは違うけれど楽しんで見ました」と話す。
さらに、エンターテインメント性の強いそれらは海外のホラー作品に似ているとして、「日本のホラー映画もそういう方向に指針がふれていくのかなとも思ったし、自分ではそれはできないと感じた」とそれぞれの監督たちの手腕に舌を巻いた。
その中で、「今回は、そういう路線上でやってほしいというリクエストはなかったし、僕がやると失敗するんですよね」と語ると、本シリーズと時間と距離を置き、自身が生み出した『リング』とは毛色の違う作品と出会うことで、「自分が撮るからには、改めて1本目に近い世界観やテイストでやるべきだと思わせてもらいました。だから、クスリとも笑われなくていいです」と原点回帰に至った理由を明かした。
そして、当時の大ヒットについて、「時代に呼応したからだと思います。テレビとビデオデッキが一家に一台ではなく、子ども一人の部屋に一台ずつ設置されるようになり、それから貞子が出てきて、自分の死を招くかもしれないという恐怖は、突拍子もないけれど、身近に感じられたんでしょうね」と推測する。
その恐怖は今回、「見たら呪われる」から「撮ったら呪われる」へと変化。SNSが普及し、「子どもがなりたい職業ランキング」で上位に食い込む動画クリエイターが闇へと引きずり込まれる姿は、新たな身近な恐怖として見る者の心に焼き付くのだ。
とはいえ、ある程度パターン化されることによって恐怖が薄れることに危惧はないのだろうか? 中田監督は、「まったく同じというわけにはいかないので緩急はつけています。ただ、今回の作品のコアな客層がティーンエイジャーだとすると、彼らは『貞子』という名前は知っていても『リング』を見たことがないだろうし、あまりにもJホラーの王道を避けるとホラーファンからそっぽを向かれる可能性もあるので、その辺は慎重にやりました」とコメント。
続けて、「貞子が井戸から出てくるシーンは意識的に同じようにしました。それは、やるべきルーティンワークだと思います」と言葉をつなげた。
観客の心をつかむ一端を担うのはヒロインの存在で、前述の作品では、松嶋菜々子、中谷美紀、ナオミ・ワッツが起用され、本作では池田エライザが抜てきされた。中田監督の考えるホラー映画のヒロインは、「戦う男性を盾にするのではなく、自ら前線で人を取り殺すパワーを持つ亡霊と対峙(たいじ)し、その意思の強さが目に宿っている女性」だ。
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