アウトローな弁護士・美帆と、火事の映像をネットにアップしたことで炎上し、彼女に助けを求める主婦・朋美が世間に立ち向かいながら、やがて固い絆で結ばれていく姿を描いたヒューマンドラマ「炎上弁護人」。本作で主人公・美帆役を演じる真木よう子が、初の弁護士役に挑戦する思いや、世間を騒がせるSNSの炎上など、ネット社会に抱く素直な気持ちを語ってくれた。
-今の時代を象徴したインパクトのあるタイトルですが、本作のオファーを受けたときの率直な感想は?
今はSNSで事件が発覚して炎上することが多いので、一般の方でも身を正して生きていかなければいけない世の中になったと思います。だから、この題材は注目を浴びるだろうし、共感を得られる面白いドラマになる気がしました。
-弁護士役は初めてだそうですね。
専門用語とかが難しそうだなぁと、ずっと避けていた弁護士役がついにきたか…という感じです。やりたくないなぁと思いましたが(笑)、話を聞いたらお堅い弁護士ではないということでやらせていただくことにしました。
-確かに、宅弁(自宅を連絡先にする弁護士)で、スーツを着用せず、法廷シーンもないということなので、通常の弁護士役とは違いますね。美帆とはどのようなキャラクターですか。
以前は大手の事務所で企業のリスクマネジメントを担当するやり手の弁護士でしたが、ある炎上案件をめぐり、人間関係のこじれなどもあって辞めて、今はネットをめぐる案件を主に担当しています。とても正義感の強い女性です。
-制作統括の高橋練さんは、真木さんについて「芝居の力があり、せりふを言わないときのたたずまいや存在感が力強く、炎上に立ち向かう弁護士役にピッタリ」と話されていましたが、美帆役はしっくりきましたか。
私も正義感は強い方だと思っているので、演じやすかったです。
-その中でも演じる上で意識されたことはありますか。
最初は、ネットの世界は嫉妬と悪意に満ちあふれたえたいの知れない人ばかりいるんでしょと思っている美帆と、ネットの世界にどっぷりはまっている朋美が対立しますが、美帆が朋美を身をていして守ったり、朋美も自分のことをいろいろと話したりしているうちに、だんだんバディものになっていきます。そういうこともあって、美帆にとって朋美はただの依頼人ではなく、面倒な妹みたいに接するようなせりふ回しを心掛けました。
-印象的なシーンを教えてください。
ものすごい数の記者に囲まれるシーンで、マイクが目の前にぶわっと出てくるのですが、昼のワイドショーでよく見る、悪いことをしたお偉方がやられているみたいで、実際にあったらすっごいイヤだなぁと思いました。逃げ場がないですからね。迫られる怖さというか、新しい気持ちを感じさせられました。
-朋美役の仲里依紗さんとは初共演ですが、どのような印象を持たれましたか。
仲さんはすごく人見知りで、おしゃべりをするタイプではないですけど、スッと役に入ることがお上手で、とてもやりやすかったです。台本に「涙を流す」とは書いてないのに、涙を流されたシーンがありましたが、とても説得力のある涙でした。あとは、かわいいです(笑)。
-Webニュースの記者・馬場明役の岩田剛典さんはいかがですか。
三代目J Soul Brothersの方なので、ロケがあると聞いたときに「大丈夫なの?」と思いましたが、オーラを消すのがすごくうまくて、本当に誰にも気付かれずにスムーズに撮影ができました。もちろん地味な格好はしていましたが、そのテクニックに一番驚きました(笑)。
-真木さんのネット社会に対する意見をお聞かせください。
以前、ドライブレコーダーに録られていたおじいさんの姿がYouTubeにアップされた事件があって、それを知った後に、バス停付近に乗用車が止まっているから、バスが止められないという現場に遭遇したんです。そのとき、あるおじいちゃんが「バスが止められないから前に行きなさい」と乗用車のドアを開けようとするのを見て、「あっ、ドライブレコーダーに録られる!」と思ったんですが、こういう、ある意味善意の行動も悪くなってしまうの? 私がおじいちゃんを止めた方がいいの? などと考えると、面倒くさい世の中になってしまったな…と感じます。ある一部分だけを切り取られる怖さもありますね。
-最後に視聴者にメッセージをお願いします。
ドラマでは現実と同じように、ネット上に名前も顔も分からない人が無責任な書き込みやつぶやきをしていますが、結局は人がやっていることで、人対人だということに主人公が気付きます。そういう意味では、見ている方々もネットやSNS上の見えない相手に対する感情が少し柔らかくなるんじゃないかな。このドラマを見て、ネット上で発信するときこそ、きれいな言葉を投げかけよう!みたいなメッセージ性のあるドラマになればいいと思います。
(取材・文/錦怜那)