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【インタビュー】『キスできる餃子』足立梨花「ラブコメディーと言われていたので、思い切りよく演じました」

 浮気した夫と離婚し、幼い娘を連れて地元・宇都宮に戻ってきたシングルマザーの藤田陽子。人生をやり直すため、閉店した実家のギョウザ屋の再開を目指す彼女の奮闘と、プロゴルファーの岩原亮(田村侑久)との恋の行方を描いたラブコメディー『キスできる餃子』が、大ヒット上映中だ。本作で主人公・陽子を演じたのが、テレビドラマや映画、バラエティー番組まで、各方面から引っ張りだこの足立梨花。撮影の舞台裏や役に込めた思いを聞いた。

◆ヘアメイク:小川幾代◆スタイリスト:奈雲恵里

-ギョウザの街・宇都宮が舞台の作品ですが、オファーを受けたときのお気持ちは?

 主演ということで、ありがたいと思う一方で、これまで宇都宮と密な関係があったわけではなかったので、驚く部分もありました。ただ、監督と話をしたら、「この映画を撮りたいと思ったとき、真っ先に思い浮かんだ」と言ってくださったんです。それがすごくうれしかった。だから、私がやることで宇都宮の皆さんが盛り上がってくれるのであれば、ぜひと。それからは、すごく楽しみになりました。

-撮影を通じて知った宇都宮の魅力は?

人が温かかったです。皆さんとても協力的で。たくさんの市民の方がエキストラで参加してくれた上に、撮影にお店も貸してくださって…。その間、駐車場で臨時営業しているんです。私たちが押し出す形になってしまったのに、「いいですよ」と言ってくださるなど、優しい人たちが集まっている街だな…と。本当に、人の温かさを知ることができた撮影でした。他にも、ギョウザはもちろんおいしいですし、食べ物ではイチゴもあります。バスケやJリーグも盛り上がっていて…。改めて、いろいろな魅力がある街だと知りました。

-ギョウザを作る場面が多かったですが、全てご自身で演じたのでしょうか。

 全て吹き替えなしで、自分でやっています。今までギョウザを作ったことはありますが、皮からというのはなかったので、皮を丸く伸ばす作業が難しかったです。きれいな丸にするためには、微妙な力加減が必要で…。クランクイン前に宇都宮に行って、皮から作る方法を先生に教わって、レシピと作り方のDVDを見ながら、家で練習しました。おかげで、ギョウザが得意料理になりました(笑)。

-今回演じた陽子というキャラクターの魅力は?

 こうと思ったら一直線に突き進む猪突猛進型がすてきです(笑)。負けず嫌いな性格なので、お父さんとけんかして「俺は手伝わん」と言われたら、「1人でやる」と言って、つらくて、苦しくて、誰かに教わりたくなったときでも、お父さんには絶対に聞かない。そういうところがかわいいのと同時に、言ったことを必ずやり遂げる姿勢は、とても尊敬できます。

-そんな陽子を演じる足立さんのお芝居に、思い切りの良さを感じました。それが作品のすがすがしい魅力につながっていたように思いますが、その辺りは意識されたのでしょうか?

 ラブコメディーと言われていたので、やり切ろうと思っていました。陽子は突き進むタイプなので、そういう猪突猛進的な部分を表現しやすいかなという狙いもあって。周りにおとなしい人が多かったこともあり、それとは違った空気感も出したかったので、思い切りやりました。

-そこは、陽子を演じる上でのポイントだと?

 そうですね。でも、やり過ぎるとばかに見えてしまいます。時々ばかに見える部分があってもいいけれど、見ている皆さんが「こいつばかだな…」と引いてしまうのは駄目。受け入れられる程度のばかでありたかったので、そこは意識して、やり過ぎないようにしました。

-陽子は自分で自分を「ばかだ」と言っています。演じる上でそのあたりのバランスは難しかったのでは?

 ただそれは、言っているだけなのかなと。自分で「ばか」と言っている人ほど、実はばかではなかったりしますから。本当にばかな場合は、そのこと自体に気付かないので、気付いている時点で本当のばかではないんだろうなと。自分を表現する時、表現しやすい言葉が「ばか」なんだろうな、と解釈して演じました。

-他の作品でも経験されていますが、母親役というのはいかがですか。

 周りの同級生が結婚して、子どもを生んだ姿を見ていると、お母さん独特の落ち着きや強さを感じることがあります。それは多分、経験しないと分からないんだろうな…と思いつつ、できるだけ意識するようにしています。ただ、この映画に関しては、監督から「自分の子どもだけど、妹や親友のような感覚で接してほしい」と言われていたので、母親という部分はあまり意識しませんでした。仲のいい友だち、という感覚で、場合によっては「子どもの方が賢くて、上じゃないの?」というように見える方が面白いと思ったので。

-この作品ではシングルマザーの役ですが、足立さんは最近、悪女のような役から女子高生、大学生まで幅広く演じられています。作品ごとの切り替えは大変なのでは?

 女子高生だから、悪女だから、という捉え方ではなく、台本はあくまでも自分が演じるという見方で読んでいます。そこに役柄として、高校生や悪女という役割が付属する…。そういうふうに考えているので、それほど苦労はしないです。悪女だからこういうメークで、高校生だからこういう衣装で、といった違いはありますが、基本的に人を作るという段階では、あまり気にしていません。同じ高校生でも、大人っぽい人もいれば、幼い人もいますから。

-この作品は、陽子とプロゴルファーの亮のラブストーリーでもあります。シングルマザーとプロゴルファーというのは、一見かけ離れているように見えますが、2人とも自分の足で立って、それぞれの土俵で戦っているという意味では、条件は同じです。女優も個人で勝負する仕事ですが、共感する部分はありましたか。

 そうですね。ただ、私だけでなく、誰が見ても共感できる部分はあると思います。日常生活を送る中で、誰もが何らかの悩みは持っていますよね。それをどう解決して前に進むか。そういうことは、誰でも考えると思うんです。そういう意味で、悩みの大きさは違うかもしれませんが、誰もが、自分を陽子や亮の立場に当てはめることができるはず。それは、私はもちろん、見ている皆さんもきっと同じなのではないでしょうか。

(取材・文・写真/井上健一)

『キスできる餃子』

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