【インタビュー】『去年の冬、きみと別れ』山本美月「できるだけ予備知識なしで見て、だまされてくれたらうれしい」

2018年3月9日 / 17:55

 『教団X』で知られる芥川賞作家・中村文則氏の同名小説を映画化した『去年の冬、きみと別れ』が3月10日から全国公開される。猟奇殺人事件の真相を追う野心的な記者・耶雲恭介(岩田剛典)を中心に、見る者の予想をくつがえす物語が繰り広げられる驚愕(きょうがく)のサスペンスだ。本作で、不安を覚えながらも耶雲を献身的に支える婚約者・松田百合子を演じたのが、シリアスなドラマからコメディーまで幅広く活躍し、進境著しい若手女優の山本美月。巧みに伏線を張り巡らせた物語で演技をする難しさや、撮影の舞台裏を語ってくれた。

松田百合子役を演じた山本美月

-映画を拝見して、次々と予想をくつがえしていく展開に驚かされました。最初に台本を読んだときの感想をお聞かせください。

 私もびっくりしました。罠にハマったな、という感じでした。

-原作とも違う展開に、さらに驚かされました。原作は読みましたか?

 実は読んでないんです。「原作を読むと、混乱するかも」と言われたので、今回は台本だけを読んで挑みました。。

-その上でお伺いします。松田百合子という役は、物語の展開を考えると、演じる上で難しさがあったと思いますが、どんなことを考えて演じましたか。

 すごく難しかったです。百合子がどんなふうに見えるべきなのか、判断に迷うところもあったので、あまり考え過ぎないように、監督から言われた通りに演じさせていただきました。

-瀧本智行監督からは演技に対して細かく指示があったそうですね。

 この作品の前に明るいOLの役をやって、声のトーンが高めになっていたので、「なるべく低く」と言われました。他にもたくさん指摘を受けましたね(笑)。いい意味で厳しく、時々褒めてくれるのがすごくうれしかったです。岩田さんにも同じように厳しく指示を出されていましたが、岩田さんと監督の間には絆がしっかり出来上がっていたのがうらやましくて…(笑)。私もまた今度、監督とがっつりやりたいです。

-役作りはどのようにされたのでしょうか。

 自分でもいろいろ考えて現場に入ったのですが、全部、監督から「それは違う」と言われてしまいました(笑)。でもその分、百合子がなぜそういうことをするようになったのか、描かれていないことまできちんと考えていて、丁寧に説明して下さったので、役を作る上ではすごく助かりました。

-主人公・耶雲恭介役の岩田剛典さんと共演した感想は?

 監督からは「掛け合いのときにリズムを大事にしろ」と言われました。岩田さんは、ものすごく役に入り込んでいたので、現場では和気あいあいという感じではありませんでしたが、映画が完成して試写のときにお会いしたら、お話されている雰囲気も全然違っていたので驚きました。

-百合子は殺人事件の容疑者となるカメラマン、木原坂雄大とも関わりますが、木原坂を演じた斎藤工さんの印象は?

 工さんとは今までも共演する機会が多かったのですが、すごくナチュラルな感じで、「工さんは本当にこういう人なのでは?」と思うぐらい似合っていました(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top