カチューシャにいまだ抵抗するも「早苗の、人の心や人生に踏み込んでいける勇気に憧れます」シシド・カフカ(久坂早苗)【「ひよっこ」インタビュー】

2017年8月17日 / 08:30

 NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、ヒロイン谷田部みね子(有村架純)が暮らすあかね荘のユニークな住人の一人、久坂早苗を好演しているシシド・カフカ。歌手やドラマー、モデルの顔も持ちながら、近年はドラマや映画でドSキャラを演じることが定着したシシドが、本来の自分をさらけ出しながら、役への思いや撮影エピソードなどを語った。

 

久坂早苗役のシシド・カフカ

-朝ドラ初出演ですが、オファーを受けた時の感想は?

 最初に演技をさせていただいた時も驚きましたが、“朝ドラ”という自分から一番遠い場所に立つことを考えもしなかったので、「えっ? 私、出るんだ…」という感じでリアルではなかったです。

-実際に出演されてみて、気持ちは変わりましたか。

 友人たちから連絡が来たりして、やっと現実と思えるようになりました。でも、途中参加だし、自分が出るまでの「ひよっこ」のファンでもあるので、ドラマを汚さないか本当に怖かった。だから最初は素直に見られなかったし、これからも不安は消えないと思います。

-早苗はズバズバものを言うことが災いして見合いを38回も断られている、謎多きオフィスレディーという設定ですが、今回も“Sキャラ”ですね。

 最初は「また強い感じの女性か…」と思いましたが、詳しい人物像を知ってからは“強がっている”不器用な感じを表そうと、せりふのスピードや抑揚の付け方などを調整しました。ドラマでの強い女性役は3回目なので、これまでとどう変化を付けるかを大切に演じています。

-ご自身と共通する部分はありますか。

 感情をバッと出すのが苦手なところや、見た目で強い女性と誤解されているところをうまく利用することもあるけれど、一方でそこに流されて、強くなければいけなくなってしまったところが似ています。

-では、シシドさんは生粋のSではない?

 自分に対してはSだけど、人に対してはそんなにSではないかな。まぁ、SかMかは紙一重ですよね。自分に何かを課すことはSのようなMのような…。でも、Sっぽくてあまりしゃべる人と思われていないので、普通に話しているだけで「すごく優しい方」と喜ばれるのは得ですね(笑)。

-シシドさんは前髪を下ろしているイメージが強いですが、おでこを出すヘアスタイルに抵抗はないですか。

 前髪はトレードマークなので下ろすことの方が多いですが、ヘアアレンジで前髪を上げることもあるのでまったく気になりません。ただ、カチューシャへの抵抗はすごくあります。いまだにカチューシャを付けている自分が受け入れられず、監督と「本当に付けなきゃ駄目ですかね?」ってけんかしています(笑)。

-共演者との現場での様子はいかがですか。

 漫画家の2人(浅香航大、岡山天音)がとにかくかわいらしい。劇中では彼らをめでて、遊んで、カットがかかると思わず笑い合っています。架純ちゃんは私より女優としてのキャリアがあるので、撮影や専門用語で分からないことはいろいろ質問して、丁寧に返してもらっています。竹内(涼真)さんは朝から島谷(純一郎役)になって来るので現場では物静かですが、食事やお酒の話をすることもあり、和やかに過ごしています。白石加代子さんからはデフォルメのさじ加減を勉強させてもらっています。(白石演じる)大家の富さんは、初めて見た時は次元が違うような衝撃を受けました。

-これまでで印象深いシーンを教えてください。

 失踪中の父親についてみね子が話してくれなかったことにすねて、みね子から「そういうことなんですか?」と聞かれた時に、「そうよ!」と答えるシーンです。私なら「そういうことじゃない」って言っちゃうし、話したくないことは無理に聞かないので、(早苗の)人の心や人生に踏み込んでいける勇気や、受け止めてやるから来いっていう強さには憧れます。

-お見合いを断られ続けている早苗ですが、結婚できそうですか。

 岡田(惠和/脚本家)さんには「結婚相手を見付けて、あかね荘を出ていきたい」という希望は伝えてあります。あのまんまの早苗を受け入れてくれる男性か、全てを変えてくれる男性か、個人的には決めかねていますが。

-ご自身は登場人物の中でどの男性がタイプですか。

 守る力もあり、寄り添うことも上手で、ちゃんと仕事をしているシェフ(佐々木蔵之介)です。売れない漫画家は私が一生食わせていく覚悟がないと駄目だから、ちょっと踏み込めないかな。

-女優業も順調のようですが、手応えを感じていますか。

 ライブみたいに「やったぜ!」っていう手応えはまだ感じていません。ドラマは最終的に編集で人に任せるものだから、自分の思い通りになっていなくても結果的に良い評価になると自分の中で整合性が取れないです。そこは回数を重ねることでいつか納得するのか、良い意味での諦めになるのか…。

-そもそも女優業をはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

 マネジャーから「明日、先方にドラマのオファーを受けますって言って来るから」と言われて、「えっ? 私、女優やるんですか?」って巻き込まれるように始まりました。最初は抵抗感がありましたが、人と物を作る作業は楽しいし、出会いもたくさんあるので、今は有意義なお仕事をさせてもらっていると思っています。

-今後も女優業は続けていきますか。

 音楽もちゃんとやりたいし、面白い話を頂いたら演技もやっていきたいです。ドラマ出演は皆さんに認知してもらえるチャンスだし、相手の演技に反応して一瞬でシーンを作るところはジャムセッションのようで、ドラマーとしての経験が生かされたり、逆に勉強になったりしています。アーティストと女優との相乗効果を狙ってやっていきたいです。

(取材・文/錦怜那)


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