エンターテインメント・ウェブマガジン
『シックス・センス』(99)以来、数々のスリラーで観客の度肝を抜いてきたM.ナイト・シャマラン監督の新作『スプリット』が、5月12日から全国公開される。23もの人格を持つ男に監禁された3人の少女が体験する恐怖を描いたこの作品は、息詰まる展開と見る者の予想をくつがえす結末が話題を呼び、全米3週連続ナンバーワンヒットとなった注目作。多重人格の男を演じたジェームズ・マカヴォイが公開に先駆けて来日し、映画の舞台裏について語った。
『フィルス』で演じたブルースという役は、双極性障害のような状態で、麻薬中毒や妄想癖があり、喪失感が原因で二面性のある症状が現れていました。しかし、この映画で演じたケビンは、解離性同一性障害を患っているので、『フィルス』とは違います。私たちはさまざまな状況と向き合う時、自分の性格の一部がそれに反応しますが、ケビンの場合はその一部分が顕在化し、一つの人格となっています。そのため「このキャラクターにはこういう過去があって…」とプロフィールを作るようなやり方はしませんでした。まず、中心となる人格を掘り下げて、それをキーに、どのような性質が多重人格化していったのかということを考えました。
医学的な専門家に会って話を聞きました。この病気に関しては現在、医学的な情報が数多く出回っていますが、妄想癖の一種ではないかという意見もあり、本当に病気なのかどうか議論の的になっています。しかし、私は本当に存在すると思っており、患者の日常に関心がありました。牛乳や卵を買いに行くときはどうしているのだろうか、といったようなことです。ただ、出演が決まったのが撮影開始の5週間前で、時間もあまりなかったことから、残念ながら実際の患者さんに会うことはできませんでした。
そこで役立ったのが、YouTubeです。実際に解離性同一性障害を患っている方たちが、ビデオブログや日記の形で、たくさん映像をアップしていました。それらを見ることで、彼らがそれぞれどんな思いで日々を過ごしているのか、詳しく知ることができました。その映像には、電気料金を払っている様子を収めたものから、自分の中の別の人格がLEGOにお金を使い果たし、一文無しになってしまったというものまであったんです。だから、医学的な情報よりもずっと役に立ちました。
サンディエゴでコミコン(コミックやSF/ファンタジー映画関連のイベント)が開催された時、ものすごく大きなパーティーがありました。『X-MEN』のメンバーや「ゲーム・オブ・スローンズ」の関係者なども出席し、大勢がお酒を飲んで踊って、非常にクレイジーな状況でした。そこへシャマラン監督がやってきたので、あいさつをして、「あなたの映画が大好きです」などと10分ぐらい話しました。その間、私もお酒を飲んで騒いでいたことを覚えています。そうしたら後日、監督からこの映画の脚本を頂いたんです。パーティーでのクレイジーな姿を目にして、「この役ができるだろう」と思ったのかもしれませんね(笑)。
監督からは「読む前に話がしたい」と言われました。「非常にクレイジーな体験になる。もしかしたら、怖いと感じるかも」という話でしたが、いい脚本で怖いと感じるのは、役者としては良いことではないかと思いました。脚本を読んだら、監督の野心とマッチしている上に、俳優にとっても観客にとっても、大胆で挑戦的な作品だと感じました。とても変わった脚本でしたが、芸術的で娯楽性もあったので非常に興奮し、すぐにサインしたくなったほどです。
特に基準というものはありません。とにかく、挑戦できるものや新しいことが学べるもの、今までと違ったことが表現できるもの、まだやったことがないものに出演したいと思っています。
ここ数年、確かに精神的に葛藤する役柄を多く演じてきました。時にはそれがドラッグやアルコール依存に苦しんでいる人物の場合もありました。『ペネロピ』は、どちらかというともう少し純粋で、より優しいジャンルの作品ですが、内面の葛藤という意味では同じですね。個人的にも、自分が置かれている環境や外見的な部分ではなく、内面的な葛藤や悩みを抱えた人に関心があり、引かれるのだと思います。
(取材・文/井上健一)
ドラマ2024年4月24日
現在放送中のドラマ「買われた男」で主演を務める瀬戸利樹が取材に応じ、本作の魅力や役作りについて語った。 本作は、三並央実氏と芹沢由紀子氏による漫画『買われた男~女性限定快感セラピスト~』が原作。セックスレスの主婦、芸能人、女社長、風俗嬢 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2024年4月21日
ディズニーの大人気者、くまのプーさんと仲間たち、クリストファー・ロビンが四季をめぐって楽しい冒険をする、新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」が4月27日から全国10都市で上演される。等身大のパペットを役者たちが操り、すてきなセッ … 続きを読む
ドラマ2024年4月20日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月14日に放送された第十五回「おごれる者たち」では、藤原道長(柄本佑)の長兄・道隆(井浦新)を筆頭に、隆盛を誇る藤原一族の姿やその支配下の世で生きる主人公まひろ(吉高由里子)の日常が描かれた。 … 続きを読む
映画2024年4月19日
長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む
映画2024年4月19日
『あまろっく』(4月19日公開) 理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。 ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む