【インタビュー】『二重生活』門脇麦 「他人を見ているつもりでも、結局そこに自分自身が見えてくる」

2016年6月17日 / 17:25

 大学院の哲学科に通う女性が、研究のために見ず知らずの他人を尾行し始めたところ、相手の秘密を知ってしまい、やがて尾行にのめり込んでゆく…。ソフィ・カルの『本当の話』の“哲学的尾行”をモチーフにした直木賞作家・小池真理子の小説を、「開拓者たち」(12)、「ラジオ」(13)の岸善幸が脚本・監督を務め、旬のキャストをそろえて映画化した『二重生活』。この作品で主人公・白石珠を演じるのが、『愛の渦』(14)や「まれ」(15)、「お迎えデス。」(16)などで活躍する門脇麦。単独初主演となる本作に込めた思いを語った。

 

(C)2015 「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015 「二重生活」フィルムパートナーズ

-この映画に出演しようと思った理由は何でしょうか。

 岸監督のテレビドラマは以前から見ていて、興味がありました。いつか絶対にご一緒したかったので、それがすごく大きいです。

-脚本も岸監督が執筆されていますが、読んだ時の印象はいかがでしたか。

 脚本を読んだだけでは何が言いたいのかはっきりとは分からなくて、どんな映画になるのか想像がつきませんでした。でも、私は「分からないこと」はマイナスだとは思っていません。今自分が理解している先に、もっと何かがありそうだと感じた時に「分からない」という言葉が出てくると思うんです。だから、すごく好奇心をそそられましたし、ワクワクしたし、やってみたいと思いました。

-実際に岸監督と組んだ印象はいかがでしたか。

 すごく居心地が良くて、幸せな現場でした。私と監督の間に共通の言語があるみたいに、お互いに一言言えば三十ぐらい分かる感じで、非常にやりやすかったです。

-この作品が単独初主演ですが、感想は?

 「お客さん入るのかな」って心配しましたけど、豪華な男性三人が共演してくださったので、そこはお任せしようと思いました(笑)。

-共演された三人の男優の印象はいかがでしたか。

 リリー・フランキーさんは以前、親子役で共演していたので、久しぶりに再会できてうれしかったです。菅田将暉さんは、これまでにも何回か共演していて、共通の知り合いもたくさんいるので、初日から違和感なく一緒にできました。長谷川博己さんは、すごくフランクな方で、たくさん話をしました。

-監督や共演者とのいい関係の中で撮影が行われた様子がうかがえますが、現場の雰囲気はいかがでしたか。

 普通の撮影現場は、カメラ前の空気とスタンバイ場所の空気がかなり違います。私自身もカメラの前に立つと、テンションが変わって一気にエンジンがかかるタイプなのですが、今回はドキュメンタリータッチということもあって、そういうのはやめようと思いました。オン、オフみたいなメリハリをつけるのはやめて、演技じゃないところを見せられたらいいなと。自分の私情まで全部持ち込んで臨もうと思っていたので。スタンバイ場所とカメラ前のテンションがずっと同じでした。ずっとオンなのかずっとオフなのか分からない感じで、ワイワイするわけでもなく、適度に緊張感もあって、ずっとカメラが回っているような不思議な感覚の現場でした。

-主人公の珠と門脇さん自身の境界線も曖昧だったのですか。

 曖昧にしました。「ここからここまでが演技」というのは、今回は面白くないかなと思ったので、本当の自分が入り混じればいいなと考えながら演じていました。

-実際に演じてみていかがでしたか。

 この映画に限らず、私がいつも目指していることなのですが、映画はフィクションですけど、少なくとも私たちが演じる中で出てくる言葉や感情は本物であるべきだと思うんです。私は基本的に「もし自分がそうだったら」と立場を置き換えてみることでしか役を演じられません。珠は尾行という特殊なことをしていますが、彼女の立場になって考えてみたらその感情は理解できました。だから、珠と本当の私は違いますが、そこから出てくる言葉や感情に違和感はありませんでした。

-“尾行”というテーマに関しては、どう思いましたか。

 面白いですよね。珠は過去に悲しい経験をしてから、自分の本当の感情に触れないように生きてきた女の子です。やっぱり人間は、自分自身を振り返るよりも、他人の人に興味が向きやすいんですよね。でも、他人を見ているつもりでも、結局そこに自分自身が見えてくる。この映画でも尾行にはそういう意味があると思うので、すごく興味深かったです。

-この作品も含めて、門脇さんの出演作を拝見すると、物語が進むにつれて最初の印象とは異なる面が見えてくるという役が多いように感じますが、演じる上でこだわっている部分はありますか。

 そういう役が多いのは、私が意識して選んでいるわけではなく、たまたまだと思います。ただ、演じる際にはそう見える説得力を持たせるため、場面に応じた力加減が必要になるので、そこは毎回考えます。

-デビューから5年が経ちましたが、役者として心がけていることはなんでしょう。

 昔からいつも大切にしているのは“映画の中の人”という感じでは終わらせたくないということです。「今日、街ですれ違った女の子かもしれない」というリアリティーが出るように心掛けています。設定とかその人の役柄などに、「いる、いる」という説得力を持たせたい。それがどんな役でも一番気を付けているところです。

 映画『二重生活』は6月25日(土)から新宿ピカデリーほか全国公開。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

志田音々「仮面ライダーギーツ」から『THE 仮面ライダー展』埼玉スペシャルアンバサダーに「埼玉県出身者として誇りに思います」【インタビュー】

イベント2024年4月25日

 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内「角川武蔵野ミュージアム」3Fの EJアニメミュージアムで、半世紀を超える「仮面ライダー」の魅力と歴史を紹介する展覧会『THE 仮面ライダー展』が開催中だ。その埼玉スペシャルアンバサダーを務めるの … 続きを読む

岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年4月25日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていく … 続きを読む

瀬戸利樹、セラピスト役は「マッチョな体も見どころ」 役作りは「実際に施術を見学して、レクチャーを受けました」

ドラマ2024年4月24日

 現在放送中のドラマ「買われた男」で主演を務める瀬戸利樹が取材に応じ、本作の魅力や役作りについて語った。  本作は、三並央実氏と芹沢由紀子氏による漫画『買われた男~女性限定快感セラピスト~』が原作。セックスレスの主婦、芸能人、女社長、風俗嬢 … 続きを読む

ディズニーの人気者「くまのプーさん」がミュージカルに! 「没入感や生の迫力を楽しめる」舞台公演を福尾誠が語る【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年4月21日

 ディズニーの大人気者、くまのプーさんと仲間たち、クリストファー・ロビンが四季をめぐって楽しい冒険をする、新作ミュージカル「ディズニー くまのプーさん」が4月27日から全国10都市で上演される。等身大のパペットを役者たちが操り、すてきなセッ … 続きを読む

「光る君へ」第十五回「おごれる者たち」見どころを成立させるドラマの積み重ね【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月20日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月14日に放送された第十五回「おごれる者たち」では、藤原道長(柄本佑)の長兄・道隆(井浦新)を筆頭に、隆盛を誇る藤原一族の姿やその支配下の世で生きる主人公まひろ(吉高由里子)の日常が描かれた。 … 続きを読む

Willfriends

page top