異色人気コミック原作の深夜ドラマを映画化した『劇場版 びったれ!!!』が、28日から全国公開される。本作は「お人好しで頼りないシングルファーザー」「切れ者の司法書士」「元極道」という“三つの顔”を持つ伊武努(田中圭)が、理不尽な目に遭う庶民を救うべく奮闘する姿を描く、痛快・裏リーガルドラマ。ドラマから主人公の伊武努を演じ続けている田中に映画に対する思いや見どころについて聞いた。
-テレビドラマから映画に発展したことへの思いは?
テレビドラマの時は少人数のスタッフが、それこそ一丸となって作りました。そんなふうにみんなで苦楽を共にして頑張った作品を、『面白い』と言ってもらえたのはすごくうれしかった。それを今回は劇場版という形でさらに大きくすることができました。“びったれイズム”の継承ができて本当に良かったです。
-伊武努というキャラクターと初めて出会った時の印象は?
オファーを頂いた時に初めて原作を読んで、伊武努というキャラクターに一目ぼれをしてしまいました。それで、今の自分がこの役に挑戦したらどうなるのだろうとすごく興味が湧いて、ぜひやらせてくださいとお願いしました。
-伊武の“三つの顔”の演じ分けのコツがあれば教えてください。
三つの顔を持った伊武努という一人の人間がいると考えて、なるべく演じ分けはしないようにしました。漫画だと伊武の見た目や目つきががらりと変わったり、背景で変化を表現することも可能なのですが、実写ではそれはできません。それに身近な事件を描いているので、キャラクターにもリアリティーを持たせたいと思いました。今回は伊武が、いかに自分を納得させながら裏の顔を使うのかという悩みと向き合うところが一つの見どころになっています。
-プライベートでも父親となり、娘のかりん役の岩崎未来ちゃんとの接し方は変わりましたか。
未来ちゃんと接しながら自分の娘と重ね合わせる…ということはありませんでしたが、少しは自分自身の感情も入っていると思います。例えば、この映画を見た友人が『娘と接している時の伊武がとても自然で優しそうに見えて、他の時とのギャップが良かった』と言ってくれました。自分では演じ分けているつもりはなかったので、そういうところに変化が表れているのかなと思います。
-難しい法律用語はどのようにして覚えたのでしょうか。
伊武は、相手を説得したり攻撃したりという会話の中で法律を武器にしているので、説明のためのせりふを話しているという感覚はありませんでした。もちろん意味が分からない言葉を調べたりはしましたが、監督や共演者の方ともよく相談しながら演じたので、せりふを覚えるのにそれほど苦労はしませんでした。
-今回はドラマとは違い、原作の舞台である広島でロケが行われましたね。
ドラマの時は広島にロケに行けなくて寂しいなと思っていました。今回は現地の方たちにもすごく協力していただいたし、実際に広島の街並みが映るだけでも説得力が増したと思います。ただ、伊武の家も司法事務所もドラマの時とは違っていたので、これでいいのかなとは思いましたけど(笑)。
-森カンナさん、竹中直人さん、山本耕史さんら共演者について聞かせてください。
カンナちゃんはいい意味でつかみどころがなくて不思議な感じがする女性で面白かったです。竹中さんと山本さんには今回はお願いして出てもらったので、思いっ切り好きにやってくださいと言いました。本当にお二人には感謝しています。
-最後に本作の見どころを。
ドラマから『びったれ!!!』を見続けてきた人にとっては伊武の成長が見どころになると思います。一人では乗り越えられないことも、誰かがいることで乗り越えられる。それは伊武にとっては、娘のかりんや同僚の杉山さんはもちろん、ひょっとすると憎んでいる父親のおかげかもしれません。とは言え、この映画は、法律バトルありバトルアクションありと、いろんな要素が入った爽快、痛快なエンターテインメントになっているので、今まで『びったれ!!!』を見たことがなかったという人でも十分に楽しめると思います。
(取材/文・田中雄二)
11月28日より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー [11月7日より広島先行上映]
公式HP/http://www.bittare.jp/