【週末映画コラム】『オズの魔法使い』の始まりの物語『ウィキッド ふたりの魔女』/読み書きができない夫を支え続けた妻『35年目のラブレター』

2025年3月7日 / 08:00

『35年目のラブレター』(3月7日公開)

(C)2025「35年目のラブレター」製作委員会

 65歳の西畑保(笑福亭鶴瓶)は、戦時中に貧しい家庭に生まれ、ほとんど学校に通えなかったこともあり、文字の読み書きができない。そんな保を妻の皎子(きょうこ・原田知世)が支えていた。

 若き日、保(重岡大毅)と皎子(上白石萌音)は、運命的な出会いを果たして結婚するが、幸せを手放したくない保は読み書きができないことを皎子に打ち明けられずにいた。

 半年後、ついに事実が発覚し別れを覚悟する保だったが、皎子は「今日から私があなたの手になる」と告げる。その後、どんな時も寄り添い支えてくれた皎子に感謝の手紙を書きたいと思った保は、定年退職を機に夜間中学に通い始める。

 最愛の妻にラブレターを書くため文字の勉強に奮闘する夫と、彼を長年支え続けた妻の人生をつづったヒューマンドラマ。新聞で紹介され、創作落語にもなるなど話題を集めた実話を基に映画化。塚本連平が監督・脚本を担当した。

 夫婦の絆、普通に読み書きができることのありがたさ、教育の大切さなどが浮かび上がってくる心温まるいい話ではあるのだが、どうしても鶴瓶と原田が夫婦ではなく親子のように見えてしまい、若き日を演じた重岡とのギャップも目についたのが残念だった。その分、夜間中学の教師を演じた安田顕や、保を救ったすし屋の店主を演じた笹野高史といった脇役たちの方が印象に残った。

 夜間中学の様子や読み書きができたことへの喜びについては、山田洋次監督の『学校』(93)を思い出すところがあった。

(田中雄二)

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