エンターテインメント・ウェブマガジン
『ポッド・ジェネレーション』(12月1日公開)
AIが発達した近未来のニューヨーク。ハイテク企業で働くレイチェル(エミリア・クラーク)は、大企業のペガサス社が提案する、出産までの10カ月間、持ち運び可能な卵型ポッドで赤ちゃんを育てるという、新しい妊娠方法に心が動く。
だが、植物学者として自然界の多様性を守るべく日々奮闘しているパートナーのアルビー(キウェテル・イジョフォー)は、自然な形での妊娠を望んでいた。
やがてペガサス社の子宮センターを見学したレイチェルは、ポッド妊娠への思いを募らせ、彼女の気持ちを知ったアルビーも不承不承同意する。2人はポッド妊娠ならではの不安や困難に直面しながら、手を取り合って進んでいくが…。
卵型のポッドで赤ちゃんを育てるという、新時代の妊娠と向き合うカップルを描いたSFコメディー。主演のクラークが製作総指揮にも名を連ね、ソフィー・バーセスが監督を務めた。ベルギー、仏、英の合作。
SFの形を借りて、ユーモアを交えながら、人間が卵(ポッド)で赤ん坊を育てるという皮肉を描き、AI音声アシスタントが家での生活の全てをサポートし、セラピーも行うような世界は果たして幸せなのかという疑問を提示する。最初は懐疑的だったアルビーが、レイチェルよりもポッドに絆を感じるようになるという図も面白い。
妊娠や子育てについて、男女の立場や役割について、あるいはAIとの関わりについてなど、いろいろなことを考えさせられる、なかなかの秀作。
(田中雄二)