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『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』(8月19日公開)
シルベスター・スタローン監督・主演の『ロッキー4 炎の友情』(85・日本公開は86)が再構築され、『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』として生まれ変わった。約42分の新映像が、追加ではなく差し替えられたので、オリジナルとの印象は大きく違う。
まず、『ロッキー4 炎の友情』は、どんなストーリーだったかというと、ボクシングを通して、宿敵から親友となったアポロ(カール・ウェザース)を、リング上で絶命させたソ連のドラゴ(ドルフ・ラングレン)に挑戦するため、ロッキー(スタローン)がモスクワに乗り込むというもの。
この映画は、当時の米ソ関係、強いアメリカの復活といったテーマが色濃く反映され、レーガン大統領が手を貸したともうわさされた。
そして、これだけ政治色の強い映画が大ヒットしたのは、ひとえにロッキー(米)対ドラゴ(ソ)が繰り広げるボクシングシーンの魅力に寄るところが大きかった。
それから37年の時を経て、スタローンは、コロナ禍で身動きが取れない中、改めて、『ロッキー4』を見て、改善の余地があると気付き、再構築したというのだが、『ロッキー4』と同時期に公開された、トム・クルーズ主演の『トップガン』(86)の続編『トップガン マーヴェリック』の存在も頭にあったのではないかと推測する。
そこには、自らもアメリカも強かった80年代を取り戻そうと考えるスタローンの目算があったはずだ。ところが、図らずもロシアのウクライナ侵攻が起き、この映画は別の意味を持つことになる。
ロッキー対ドラゴの激闘を見ながら、80年代を懐かしむばかりでなく、今のロシアを取り巻く諸々の問題と重ね合わせながら見るという新たな視点が生まれたのだ。
今回は、配信の予定はなく、映画館でのみ鑑賞が可能とのこと。『トップガン マーヴェリック』同様、この映画も、映画館で楽しむべき映画なので、それもまたよしだと思う。
(田中雄二)