【映画コラム】ある女性に訪れた小さな奇跡を描いた『ツユクサ』

2022年4月28日 / 07:15

『ツユクサ』(4月29日公開)

(C)2022「ツユクサ」製作委員会

 小さな港町で暮らす五十嵐芙美(小林聡美)は、断酒会に入り、気心の知れた友人たち(平岩紙、江口のりこ)とたわいのない時間を過ごしたり、年の離れた小さな親友・航平(斎藤汰鷹)と一緒に遊びに出掛けたり、車の運転中に隕石がぶつかるという信じがたい出来事に遭遇したりと、楽しい毎日を送っている。

 だが、彼女が一人で暮らしているのには、ある悲しい理由があった。ある日、彼女は町に引っ越してきた謎の男・篠田吾郎(松重豊)と運命的な出会いをする。

 安倍照雄のオリジナル脚本を基に、平山秀幸監督が映画化。ロケは主に西伊豆で行われたようだ。小さな隕石が芙美の車にぶつかる以外、劇的なことは何も起こらず、小さな港町に住む、限られた人々の日常を映すだけの地味な映画だが、温かみと悲しみが同居したような不思議な味わいを感じさせ、思わず笑ってしまうようなユーモラスなシーンもある。小学生の航平が語り部になっているのもユニークだ。

 また、港町の風景の良さに加えて、隕石、酒瓶、草笛、ネックレス、写真などの小道具も効いている。
 
 小林と松重が体現する大人の恋にちょっとドキドキし、絶妙なタイミングでエンディングに流れる名曲「あなたの心に」(歌:中山千夏)に、思わず目頭が熱くなった。小品の佳作という表現がぴったり当てはまるような映画だ。

(田中雄二)


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