【映画コラム】地元密着型のものづくり映画『あしやのきゅうしょく』『吟ずる者たち』

2022年3月3日 / 07:15

『吟ずる者たち』(3月25日公開)

(C)2021ヴァンブック

 日本酒造りが盛んな広島の町で、日本で初めて吟醸酒を造った三浦仙三郎の思いに触発され、酒造りの道を歩み始み始めた女性の姿を、現代と明治時代を交差させながら描く。監督の油谷誠至と脚本の仁瀬由深は広島県竹原市出身だ。 

 東京で夢破れ、故郷の広島に帰ってきた永峰明日香(比嘉愛未)。明治時代の三浦仙三郎(中村俊介)の杜氏の末裔(まつえい)が継いだ酒蔵で育った彼女だが、養女であることから、家業からは距離を置いていた。だが、目標を見失った明日香は、病に倒れた父(大和田獏)が家宝とする仙三郎の手記を目にする。

 そこには、新米酒造家だった仙三郎が、醸造中に中の酒が腐る「腐造」に何度も見舞われながら、安定した日本酒醸造技術の確立に研さんを重ね、ついに軟水による低温醸造法を導き出すまでが記されていた。

 この映画のキーワードは、仙三郎がモットーとした「100回試して1000回改める」という意味の「百試千改」。映画を見ると、いかに酒造りに手間がかかり、しかも繊細な作業なのかがよく分かり、今後、日本酒を飲むときは、心して飲まなければ…という気にさせられた。

 また、昨年、広島を訪れた際、街のあちこちに、この映画と、同じく広島を舞台にした『孤狼の血 LEVEL2』のポスターが貼られているのを目にし、改めて“地元映画”の価値について考えさせられたことを思い出した。

(田中雄二)

 

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