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何にせよ、スティーブン・ソンドハイム作詞、レナード・バーンスタイン作曲の歌曲の素晴らしさを再確認させられた思いがする。今回は、特に「アメリカ」と「マンボ」、そして「マリア」から「トゥナイト」への流れがよかったが、決闘前のシーンで、ジェッツ、シャークス、アニータ、トニー、マリアの感情が交錯する“五重奏の「トゥナイト」”は、61年版の方がよかった気がする。
さて、映画を撮ることが大好きなスピルバーグ監督としては、単純に一度はミュージカルを撮ってみたかったという思いもあったのだろう。
ただ、『レディ・プレイヤー1』(18)の公開時にインタビューした際、「今は人が人を信用しなくなっている。そして今のアメリカは思想的にも半分に分かれ、信頼や信用がなくなってきている。それが怖いし、このままではいけないと思う」と語っていたから、この題材なら、そうした思いも表現できると考えたのではないだろうか。
終映後、これはこれで傑作に仕上がっていると思ったものの、何かもやもやとした気持ちが残ったのは否めなかった。61年版を見ていないという若者と話したが、まっさらな気持ちで見られるという意味では、その方が幸せなのではないかと思ったし、どうしても61年版と比較してしまう自分とは違い、1本の映画として正当な評価が下せるのではないかとも思った。
(田中雄二)