名作ミュージカルに現代的な視点を盛り込んだ『ウエスト・サイド・ストーリー』【映画コラム】

2022年2月10日 / 07:15

 スティーブン・スピルバーグ監督が、伝説のミュージカルを映画化した『ウエスト・サイド・ストーリー』が、コロナ禍での何度かの公開延期を経て、いよいよ2月11日から公開される。

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 物語の舞台は、1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエストサイドには、夢や成功を求める多くの移民たちがいた。社会の分断の中で、貧困や差別に直面した彼らは、同胞の仲間とグルーブを結成するが、各グループは対立する。

 特に、ポーランド系移民のジェッツとプエルトリコ系移民のシャークスは激しく対立し、一触即発の状態に。そんな中、シャークスのリーダーを兄に持つマリアと、ジェッツの元リーダーのトニーが運命的な出会いを果たす。

 見る前は、あのロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンス監督の名作をスピルバーグ監督がどう料理し直したのかという興味と、果たしてリメークする必要があったのかという疑問が相半ばして、妙に落ち着かなかった。

 ところが、20世紀フォックスのファンファーレに続いて、おなじみのプロローグが流れ始めると、一気に引き込まれ、これはこれとして、前作(61年版と称するようだ)とは別物として楽しもうという気分になった。

 そして、音楽の入れ方、振り付け、色遣い、カメラワークなどにさまざまな工夫が見られ、61年版とは違うものにしようと努力したスピルバーグ監督をはじめとする、スタッフ、キャストの気概が伝わってきた。

 今回の主な配役は、トニー(アンセル・エルゴート)、マリア(レイチェル・ゼグラー)、ベルナルド(デビッド・アルバレス)、リフ(マイク・ファイスト)、アニータ(アリアナ・デボーズ)、チノ(ジョシュ・アンドレス)…。

 ゼグラーをはじめ、シャークス側の配役の多くにラテン系の俳優を起用することによって、見る者にリアリティーを感じさせ、移民の問題をより鮮明に浮かび上がらせる効果があった。つまり、そこに現代的な視点が示されることになるのだ。

 また、61年版のトニー(リチャード・ベイマー)とマリア(ナタリー・ウッド)の歌は吹き替えだったが、今回は恐らくほとんど吹き替えなしで、本人が歌っているのではないかと思われる。その点で、一人の俳優が演じ切るという一貫性を感じることができる。

 トニーが働くドラッグストアの店主は、61年版では中年男性のドク(ネッド・グラス)だったが、今回は白人と結婚したプエルトリコ出身の女性に変えている。これを、61年版のアニータ役のリタ・モレノが演じているのが見どころの一つで、彼女と今回のアニータ役のデボーズが絡むところには、ほろりとさせられるが、いささか彼女が目立ち過ぎるところがあると感じた。

 
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