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『オペレーション・ミンスミート -ナチを欺いた死体-』
第2次世界大戦中の1943年、イギリスは対ナチスドイツ戦で、イタリア・シチリアの攻略を考えていたが、シチリア沿岸はドイツ軍が堅固な防備を敷いていた。
状況を打開するため、イギリス諜報部(MI5)のモンタギュー少佐(コリン・ファース)、チャムリー大尉(マシュー・マクファディン)、フレミング少佐(ジョニー・フリン)らは、熟考の末にある奇策を思いつく。
「オペレーション・ミンスミート」と命名されたその作戦は、「イギリス軍がギリシャ上陸を計画している」という偽造文書を、高級将校に仕立て上げた死体に持たせて地中海に放出し、ドイツのアドルフ・ヒトラー総統をだますというもので、イギリスのウィンストン・チャーチル首相も半信半疑ながら、作戦を支持した。
モンタギュー少佐らは、ひそかに手に入れた死体をビル・マーティン少佐と名付け、うその経歴をでっち上げていく。こうして、英独の思惑が交錯する中、ヨーロッパ各国の二重三重スパイたちを巻き込んだ、大いなるだまし合いが始まる。果たして作戦は成功し、イギリスが戦局を有利に進めることは出来たのか…。
「007」シリーズの原作者イアン・フレミングも登場する、実話を基に描いたベン・マッキンタイアーの著書をジョン・マッデン監督が映画化。第2次世界大戦の行方を左右するターニングポイントで秘密裏に実行され、戦後、極秘扱いされてきた作戦の全容を明らかにする。
とはいえ、これはイギリスでは知る人ぞ知る話で、同じ事件を描いた日本未公開の『The Man Who Never Was』(56)という映画やテレビドラマも製作されているとのこと。やはりイギリスはスパイが暗躍する国なのだと納得させられるような、うそのような本当の話というのが面白い。
また、戦中秘話の掘り起こしという点では、イギリス政府が50年間隠し続けた、ドイツ軍が誇った世界最強の暗号エニグマの解読に挑んだ、天才数学者アラン・チューリングの姿を描いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)と通じるところもある。