【映画コラム】前田哲監督の家族を描いた2本の映画『そして、バトンは渡された』と『老後の資金がありません!』

2021年10月28日 / 08:44

『老後の資金がありません!』

(C)2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

 原作は、垣谷美雨の同名小説。後藤篤子(天海祐希)は、家計に無頓着な夫の章(松重豊)、フリーターの娘まゆみ(新川優愛)、大学生の息子・勇人(瀬戸利樹)と暮らす平凡な主婦。コツコツと老後の資金を貯めてきた。

 ところが、しゅうとの葬式代、パートの突然の解雇、娘の結婚、さらには夫の会社が倒産と、貯えた金を目減りさせる出来事が次々と降りかかる。

 そんな中、夫の母・芳乃(草笛光子)を引き取ることになるが、芳乃の奔放な金の使い方で予期せぬ出費がかさみ、篤子はさらなる窮地に追い込まれる。

 前田監督は、大人が見られるコメディー映画を目指して、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』同様、一つ間違えれば、単なるお涙頂戴話になりかねないような難しい題材を、あくまでもエンターテインメントとしてテンポよく描いている。だから、身につまされながらも、笑いながら見ていられるのだ。

 中でも、天海のコメディエンヌぶりと、草笛のお達者ぶりが際立つ。前田監督によれば、ラスト近くで芳乃が篤子に言う「人間わがままに生きた方が勝ちよ」というせりふがこの映画のテーマだという。長く家族に関する映画を撮ってきた山田洋次監督の「家族とはやっかいだけどいとおしい」という言葉が、この映画にも当てはまる。(田中雄二)

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