【映画コラム】夫婦や結婚、創作活動をシニカルかつコミカルに描いた『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』

2021年9月2日 / 07:15

幽霊を交えた奇妙な三角関係の生活『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』

(C)BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020

 1930年代、英国のベストセラー作家のチャールズ(ダン・スティーブンス)は、脚本を書いて映画界への進出を狙っていたが、スランプに陥っていた。というのも、彼の小説は事故死した最初の妻エルヴィラ(レスリー・マン)が語ったアイデアをまとめたものだったからだ。

 そんな中、面白半分に行った降霊会で、霊媒師のマダム・アルカティ(ジュディ・デンチ)がエルヴィラの霊を呼び戻してしまう。

 再びエルヴィラのアイデアを聞くことができて、チャールズはスランプを脱するが、新しい妻のルース(アイラ・フィッシャー)は面白くない。やがて彼らの奇妙な三角関係は意外な結末を迎える。

 元祖マルチタレントとも呼ぶべきノエル・カワードの原作戯曲は、後に『アラビアのロレンス』(62)などで、スペクタクル映画の巨匠と呼ばれたデビッド・リーンが、若き日に監督した『陽気な幽霊』(45)をはじめ、何度も映画化やドラマ化がなされているが、今回は、テレビシリーズ「ダウントン・アビー」の監督の1人であるエドワード・ホールが映画化した。

 もちろん、今の時代に昔の舞台劇をそのまま映画化しても能がないので、男女の力関係などに現代風のアレンジを施しながら、アールデコ調の大邸宅を舞台に、古典的な艶笑喜劇の再現を試みている。ただ、華麗なファッションなど、映像的にはこの映画の方が優れているのだが、粋なコメディーという点では、オリジナルの『陽気な幽霊』にはかなわなかったのが残念だ。(田中雄二)

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