【芸能コラム】必見!「西郷どん」第32回「薩長同盟」は、俳優陣の熱演が胸打つ屈指の名編

2018年8月25日 / 14:21

 だがそれは、一朝一夕にできたものではない。ここに集まった俳優、一人一人がこれまで積み上げてきた熱量の高い芝居があればこそ。それが一つになったことで、これほどのシーンになったのだ。

 その意味で、この場面は本作の一つの集大成であり、全編中、屈指の名場面になることは確実だろう。会見で鈴木が「『西郷どん』は、史実の裏にある人間的な感情を届ける作品。そういう意味で、『西郷どん』らしい薩長同盟になった」と振り返ったが、まさにそんな場面に仕上がっている。

 そして、筆者にとってこのエピソードが印象的だった理由がもう一つある。それは、敵対していた薩長が手を結ぶ過程が、世界中で分断と対立が進む今の世にも通じる理想的な姿として映ったからだ。この点に関して鈴木から、筆者の思いと重なる言葉が出たので、抜粋して引用する。

 「多数の人が憎み、いがみ合っている国同士でも、実際に触れ合ってみると、すごく仲がよくなる瞬間がある。俳優という職業をやっていて、僕はそういう感情を信じたいと思うんです。僕らの芝居で戦争がなくなるわけではありませんが、エンターテインメントというものを通して、人の良心を信じていきたい。(中略)今も同じようなことが起きていますが、今も続く、そういう憎しみと友情の縮図のように見えました」。

 第32回「薩長同盟」は、これまで見てきた視聴者にとっても見逃せない回であることは言うまでもないが、初めて「西郷どん」を見る人の心にも、きっと何かを残すに違いない。

(井上健一)

「西郷どん」第32回「薩長同盟」から

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