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当然、史実に基づく物語なので、結論は最初から見えている。それでも、このときの家康が選択し得るあらゆる可能性を提示した上で、いかに決断を下すかという緊迫感あふれるドラマを作り上げた。
さらに、個人的な感情が先走る家康には主君として未熟な部分があること、それと同時に、家臣たちの言葉に耳を貸す懐の深さがあることなど、その微妙な人物像まで浮き彫りにしてみせた。この間、およそ9分。登場人物それぞれの個性を生かした鮮やかな会話劇だった。
それは、さながら家康のブレーンストーミングといった様子。これまでも何度か繰り返されてきた展開だが、これを積み重ねることで、家康は少しずつ成長していくに違いない。その家臣たちのやり取りは物語が進むにつれ、どう変わっていくのだろうか。そこに注目すると、新たな作品の魅力を発見できるに違いない。
(井上健一)