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脚本の三谷幸喜が、かつて「サザエさん」を引き合いに出したのも、あながち間違いではなかったと思えてくる。極論かもしれないが、義時と時政の対立は「親子げんか」といってもいいかもしれない。
緊迫の度合いを増す物語とは裏腹に、ここまで36回の物語を積み重ねてきた2人の関係には、そう思わせるだけの濃密さとぬくもりがあった。それが、対立せざるを得ない現在の立場とのギャップを際立たせ、親子が引き裂かれていく切なさを浮き彫りにする。
一見、権力闘争を描きながらも、その裏に隠れているのはあくまでも家族のドラマ。そのことを再認識させてくれたこの回は、時政が実朝に出家を迫る場面で幕を閉じた。
果たして時政の運命はどうなるのか。時政を謀反人として討ち取ろうとする義時は、事態収拾のためにどんな決断を下すのか。「時を継ぐ者」と題された次回の放送を静かに待つばかりだ。
(井上健一)