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その点では、第23回の終盤、比奈(堀田真由)が義時に思いを打ち明ける一幕も印象深かった。「鎌倉に帰ったら、私の世話は無用ですから」と告げる義時に、「もう少し、そばにいさせてください」と願い出る比奈。
しかし、義時は「私は、あなたが思っているよりも、ずっと汚い。一族を守るためなら、手立てを選ばぬ男です。一緒にいても、幸せにはなれない。そして何より、私は死んだ妻のことを忘れることができない。申し訳ない」と断る。これに対して比奈はこう食い下がる。
「私の方を向いてくれとは言いません。私が小四郎殿を見ていれば、それでいいのです」
この言葉は、第13回で義時が思いを寄せる八重(新垣結衣)に告げた、「振り向かなくても構わない。背を向けたいのなら、それでもいい。私はその背中に尽くす。八重さんの後姿が幸せそうなら、私は満足です」という言葉を思い出させる。
かつてそんな言葉を発したとは思えない今の義時を見ていると、いつの間にか遠いところに来てしまったことを実感する。そんなことに気付かせてくれる若い世代の金剛や時連、比奈らと義時がこれからどう関わり、どう変わっていくのか。間もなく後半を迎える物語の行方とともに、これからも見守っていきたい。
(井上健一)