【連続テレビ小説コラム】「カムカムエヴリバディ」最終週 「3世代の物語」が浮き彫りにした平和の尊さ

2022年4月10日 / 19:25

 最終的には誤解が解け、安子がるいと涙の再会を果たしたのはご存じの通り。だがそれが実現したときには、悲痛な別れから50年以上がたっていた。しかも、彼女の人生を変えてしまった兄・算太(濱田岳)や、義弟・勇の妻・雪衣とは二度と顔を合わせる機会のないまま終わっている。戦争が人の一生に及ぼす影響の大きさを、まざまざと教えられた。

 また、本作は「3世代、100年の物語」という触れ込みの通り、映画や朝ドラ、ヒット曲など、各時代を象徴する文化や風俗を取り入れながら物語が進行した。その一方で、阪神淡路大震災や東日本大震災のような社会に大きな影響を与えた数々の災害や事件、出来事はほとんど描かれていない。その中で唯一、明確に描かれたのが「戦争」だった。

 それにより、人の運命を大きく変える「戦争の罪深さ」がさらに際立つこととなった。物語が連続していた2代目ヒロインの“るい編”と3代目ヒロイン“ひなた編”とは異なり、“安子編”と“るい編”の間が完全に断ち切られていたことも、その印象をより強くする。

 戦後70年を越えた今、戦争を語り継ぐことの難しさがしばしば話題になる。そんな中、本作は「3世代の物語」という形を取ることで、単独のヒロインでは伝えきれない「数十年にわたる戦争の悲劇」という新たな視点を獲得し、「平和の尊さ」を改めて浮き彫りにした。その意味でこれもまた、半年間毎日続く朝ドラにしかなしえない物語だったと思うのだ。

(井上健一)

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