【コラム】栄冠はどの作品に? 『ドライブ・マイ・カー』はどうなる? 授賞式直前! 第94回アカデミー賞主要6部門の行方を占う

2022年3月27日 / 08:00

【作品賞】

 10作品がノミネートされた最注目の作品賞は混戦模様。有力なのは、英国アカデミー賞などを制し、監督賞も本命の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と、全米俳優組合賞や全米製作者組合賞などを受賞した『コーダ あいのうた』。もし『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が受賞すれば、NETFLIX作品としては初の栄冠となり、時代の転換点となりそうだ。

 ただし、いずれも決め手に欠けるところがあり、技術部門を中心に多数の受賞が予想される『DUNE/デューン 砂の惑星』や全米映画批評家協会賞ほかを制した『ドライブ・マイ・カー』などが後を追う。

 さらに注目したいのが、7部門にノミネートされている『ベルファスト』だ。紛争によって離れざるを得なかった故郷への思いをつづった物語は、現在のウクライナ情勢に重なるものがあり、アカデミー賞の投票権を持つ世界中のアカデミー会員たちの心をつかむ可能性もある。

  混戦が予想される中、1本に絞るのは難しいところだが、ここは世相も考慮し、聴覚障害のハンデを乗り越えていく家族愛を描いた温かなドラマ『コーダ あいのうた』としておきたい。

 以上、主要6部門の予想を整理すると、以下の通り。
助演男優賞:トロイ・コッツァー『コーダ あいのうた』
助演女優賞:アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』
監督賞:ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
主演男優賞:ウィル・スミス『ドリームプラン』
主演女優賞:ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』
作品賞:『コーダ あいのうた』

 なお、作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門で候補になっている『ドライブ・マイ・カー』は、作品賞と監督賞は難しいかもしれないが、脚色賞と国際長編映画賞は有力な候補の一つ。

 その行方を左右しそうなのが、『ドライブ・マイ・カー』と同じ国際長編映画賞に加え、ドキュメンタリー長編賞、アニメーション賞の3部門で候補になっている『FLEE フリー』(6/10公開予定)だ。

 祖国アフガニスタンを離れ、難民となった青年の半生をアニメーションで表現した異色作で、紛争や難民、人種差別、LGBTQ+といった現代社会のさまざまな問題を内包し、高い評価を受けている。加えて、迫害を逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民というヨナス・ポヘール・ラスムセン監督の経歴も、現在のウクライナ情勢を連想させることから、いずれかの部門を受賞するかもしれない。

 『ドライブ・マイ・カー』はどうなるのか? 作品賞の行方は? 興味は尽きないが、その結果が判明するのはもう間もなく。世界が注目する年に一度の映画の祭典を、期待に胸を膨らませつつ、楽しみに待ちたい。

(井上健一)

『コーダ あいのうた』 (C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

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