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そんな義時を、小栗はいかに演じていくのか。大河ドラマには「役者が1人の人物を長期にわたって演じる」という大きな特徴がある。しかも、その人物像は不変ではなく、物語が進むにつれ、年齢を重ねて変化、成長していく。これは、他のテレビドラマや映画などの映像作品にはない大河ドラマだけのものだ。小栗が語っていた「全てやり切ったときの達成感や、そのときに自分に返ってくるものも大きいに違いありません」という言葉にも通じる部分だろう。
近年の主演俳優を振り返ってみても、「麒麟がくる」(20)の長谷川博己、「青天を衝け」(21)の吉沢亮など、1年という時間(撮影期間として考えれば、それ以上)を費やした俳優の演技は、役者自身が役と一体化することでしか表現し得ない高みにまで達し、視聴者の心をつかんでいった。
今回、小栗が挑むのは、そうした未知の領域だ。「青天を衝け」クランクアップ後のインタビューで吉沢は「転機になった作品は『青天を衝け』です、と一生いっているような気がします」と語っていたが、「大河ドラマの主演」という経験は、役者にとってそれぐらい大きな意味がある。そんな経験をこれから積み重ねていく小栗が1年後、どんな表情を見せてくれるのか。それを物語の進行とともにリアルタイムで見届けることができるのは、われわれ視聴者にとっても大きな楽しみである。
小栗=義時の船出まで、もう間もなく。1年にわたるその旅の行方を、これから期待を込めて見守っていこうと思う。
(井上健一)