【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第二回「栄一、踊る」渋沢栄一と徳川慶喜を“舞い”でつなぐ粋な演出に膨らむ期待

2021年2月23日 / 13:08

 代官に命じられた人足仕事を終えて帰宅した栄一の父・市郎右衛門(小林薫)が、疲れ切ってわらじを脱いでいると、外から太鼓や笛の音が聞こえてくる。

 「何だろう?」と様子を見に出た栄一の母・ゑい(和久井映見)の目に飛び込んできたのは、かわいらしく舞う2人の小さな獅子。

 やがて、その音につられた市郎右衛門や村人たちが集まり、獅子舞を囲んで輪ができる。その獅子が、多忙を極める人々を元気づけようとする栄一と喜作だと知った市郎右衛門は、「それなら、俺だって…」と、おはやしに合わせて踊り始める…。

渋沢栄一役の吉沢亮

 NHKで放送中の大河ドラマ「青天を衝け」第二回(2月21日放送)のクライマックスだ。自分だけでなく、みんなの幸せを考えて行動する栄一の成長を描いたこの場面に、子役の小林優仁から主演の吉沢亮へのバトンタッチをオーバーラップさせた語り口も鮮やかで、心に染みる名場面となった。(番組公式twitterによると、子役たちはこの獅子舞を演じるために、3カ月の特訓を積んだらしい)。

 さらに、「栄一、踊る」と題したこの回には、もう一つの“舞い”が登場した。それが、徳川慶喜(草なぎ剛)が将軍・徳川家慶(吉幾三)の前で披露する能だ。

 これを見て、先週放送された第一回の冒頭、栄一と慶喜との出会いの場面を思い出した。このときは、馬で疾走する慶喜の後を、栄一が自分の足で走って必死に追い掛けていた。慶喜が走れば栄一も走り、栄一が舞えば慶喜も舞う。走りと舞い、共通のモチーフで両者をつなぎつつ、馬と自分の足、庶民的な獅子舞と格式高い能という差異を際立たせることで、住む世界が違うことを印象付ける。この2人がこれからどのように巡り合っていくのか。今後の展開を期待させる粋な演出に、思わず膝を打った。

 最後の将軍・慶喜は、栄一の人生に大きな影響を及ぼす人物で、本作では前半、栄一と並行して慶喜の物語が描かれることになっている。史実では、後に栄一は慶喜に仕え、将軍に就任した慶喜の指示でパリ万博を訪問。この経験がその後の人生に役立つこととなる。

 そんな恩ある慶喜に対して栄一は終生変わらぬ敬意を抱き、明治に入ると25年もの歳月を費やして伝記『徳川慶喜公伝』を編さん。これは、今も慶喜を知るための重要な資料となっている(1998年の大河ドラマ「徳川慶喜」でも活用された)。

 そんな2人の関係の深さを考えると、共通のモチーフで2人をつなぐ演出は、何とも心憎いアイデアだ。それだけでなく、慶喜がもう一人の主人公的な存在になるのでは…という予感すら漂ってくる。

 慶喜を主人公にした作品では、大河ドラマ「徳川慶喜」が有名だが、この時は幕末の江戸無血開城で物語が完結し、後半生は描かれなかった。だが、当時の慶喜はまだ30歳足らずで、70年を超える生涯の半分にも満たない。

 
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