バーナード・マクマホン監督「この映画はレッド・ツェッペリンのファンのために作ったというよりも、100年後の人たちが見ても楽しめるかどうかというのがとても大切な要素でした」『レッド・ツェッペリン:ビカミング』【インタビュー】

2025年9月25日 / 10:00

 イギリスの伝説のロックバンド、レッド・ツェッペリンのメンバー、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、ロバート・プラントが初めて公認したドキュメンタリー映画『レッド・ツェッペリン:ビカミング』が9月26日から全国公開される。メンバー自らがバンドの歴史を語り、演奏シーンを部分的ではなく1曲まるごと映し出すことで、当時のライブをリアルタイムで目撃したかのように体感できる本作を監督したバーナード・マクマホンに話を聞いた。

(C)2025 PARADISE PICTURES LTD.

-この映画の製作のきっかけは?

 2017年にロバート・レッドフォードらに出資してもらい、ブルース、ゴスペル、カントリーなどの歴史を4部作として描いた『アメリカン・エピック』という音楽ドキュメンタリー映画を作りました。それが第2次大戦ぐらいまでの時代だったので、次に作るものは1970年代ぐらいまでの、技術的にも社会学的にも大きな変化を遂げた時代を描きたいと思っていました。僕は幼い頃にペーパーバックでレッド・ツェッペリンと初めて出会いました。彼らの音楽のことは全く知りませんでしたが、それを3回読んでとても楽しめました。その後、彼らの音楽を聞くようになったわけですが、今回、映画化の可能性を考えた時に、彼らの物語が僕の意図するものと合うのではないかと思いました。この映画は本当に僕たちが好きな世界であって、誰も見たことのないようなものを、あらゆるテクニックを駆使しながら語りたいと思い、その時代を知らない人にとってもタイムトラベルのような形で参加してもらえるようなものを想定しました。

-レッド・ツェッペリンの曲からではなく本から入ったというのはとてもユニークな体験であり、視点ですね。

 そうですね。自分の視点は彼らの音楽的なところから入っていない分、とてもラディカル(急進的)だと言えるかもしれません。プロデューサーのアリソン・マクガーティも、レッド・ツェッペリンを聞いて育っていないので、彼らのことは知りませんでした。彼女が聞いていたのはピンク・フロイド、ジャズ、クラシック、ブルース、ゴスペル、カントリーだったので、今回はこれなら彼女にも理解してもらえるという視点から描き、彼女の反応を見ながら構成していくことができたことは、大きな要素の一つだったかもしれません。僕としては、この映画はレッド・ツェッペリンのファンのために作ったというよりも、100年後の人たちが見ても楽しめるかどうかというのがとても大切な要素でした。そういう意味では、おっしゃるようにとても変わった視点だと思うので、そこに気付いてくださって本当にありがとうと言いたいですし、そうした視点の中から、その世界の背景や関係性が積み上げられ、より大きな事象となって現れるところに興味がありました。

-今回は、メンバーのジミー・ペイジとロバート・プラントとジョン・ポール・ジョーンズを、3人一緒ではなく、個別でインタビューしていました。そこがとてもユニークだと思ったのと、普通のドキュメンタリーではいろんな人の証言が入りますが、今回はそれもなくて、ジョン・ボーナムの生前のインタビュー音源はありましたが、ほぼ3人の語りだけに終始していました。そうした構成にした意図はどこにあったのでしょうか。

 実は、われわれは3人の子ども時代のクラスメート、ゆかりのあるミュージシャン、エンジニア、プロデューサーといったさまざまな関係者に膨大なインタビューを行い、その人たちの話を総合してチェックするという作業をしました。ただ、観客にとってのいい映画の条件の一つは、余計なものがないことだと思うし、3人の話に集中してほしかったので、今回はあえて入れませんでした。3人はとても素晴らしい洞察力の持ち主ですが、これまで彼ら自身がお互いや自分たちのことについて話したことはほぼなかったと思います。もしかしたら今後も一切話すことはないかもしれません。例えば、僕と日本人であるあなたは違う言語を話しますが、字幕を通して映画を見ていただいたとしても、彼らの声のトーンやアクセントや表情、そして音楽性が画面に現れて、それを感じることができると思います。彼ら3人に語ってもらうことによって、彼らの世界に入り込めるようにしようと考えました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

石橋静河「皆さんに『一歩前進してみようかな』と思っていただけたら」連続テレビ小説主演に懸ける思い【連続テレビ小説「ブラッサム」インタビュー】

ドラマ2026年9月26日

 9月28日から2026年後期連続テレビ小説「ブラッサム」が、NHKで放送開始となる。主人公は、明治、大正、昭和を駆け抜け、自由を求め続けた作家・宇野千代をモデルにした葉野珠。彼女が苦難の中でも「幸せのかけら」を見つけ、常に前に進むことで人 … 続きを読む

【映画コラム】戦争が終わった後に残るものは…『ハート・オブ・ビースト』『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

映画2026年9月25日

『ハート・オブ・ビースト』(9月25日公開)  かつて陸軍特殊部隊で生死を共にした退役軍人のジェームズ(ブラッド・ピット)と、元軍用偵察犬で義足のオーディン。戦場を離れた現在も、彼らは相棒として深い絆で結ばれていた。  ところがアラスカ上空 … 続きを読む

市川團十郎、市川新之助「こういう形で記録に残せたのは非常によかったと思います」【インタビュー】『襲名』

映画2026年9月24日

 十三代目市川團十郎白猿の襲名と八代目新之助の初舞台を正面から捉えた、三池崇史監督のドキュメンタリー映画『襲名』が、9月25日から全国公開される。映画の公開を前に、團十郎、新之助親子に話を聞いた。 -まず、映画を見て感じたことから伺います。 … 続きを読む

尾上松也「金田一耕助を演じる喜びがふつふつと」奥智哉「今の時代にふさわしい作品に」名作ミステリー映画で共演『八つ墓村』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 横溝正史原作の名作ミステリーが、令和の時代によみがえる!これまで繰り返し映像化されてきた『八つ墓村』が装いも新たに映画化され、9月18日から全国公開となる。  岡山県の山奥にひっそりとたたずむ八つ墓村で起きる連続殺人の謎に、名探偵・金田一 … 続きを読む

有村架純、石田ひかり、姫野花春「見終わった後ですごく幸せな気持ちになれる映画です」『さとこはいつも』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 沖田修一監督が、年齢も育った環境も異なる3人の「さとこ」という女性の人生が交差していく様子をオリジナルストーリーで描いた『さとこはいつも』が、9月18日から全国公開。本作で、35歳の沙都子を演じた有村架純、55歳の里子を演じた石田ひかり、 … 続きを読む

page top