エンターテインメント・ウェブマガジン
47歳のブラッド(ベン・スティラー)が、大学進学を目指す息子とボストンへ向かう旅の中で、自らの人生を見つめ直していく。人生の後半戦を歩み始めた中年男性の悲哀と再生を温かいタッチで描いた、プランBエンターテインメント製作の『47歳 人生のステータス』が6月11日からオンライン上映される。配信を前に、本作の監督・脚本を担当したマイク・ホワイトに話を聞いた。
今回は、自分の体験を反映させた物語になっています。自分では、充足した生活を送っていると思っていますが、ネガティブな気持ちになるときもあります。そんなときは、自分と他の人とのことを比較して、その人の成功をうらやましく思ったり、自分には何かが足りないと思ってしまいます。そうした気持ちは、野心家を突き動かす原動力にはなりますが、僕の場合は、そういうことを感じたときは恥ずかしくなります。この映画の脚本を書いているとき、その恥ずかしさから逃げるのではなく、直面してみようと思いました。そこから何が出てくるのか見てみようと考えて書いた作品です。
おっしゃる通り、それが問題なわけです。多くの人から見れば、ブラッドの人生はうらやましく思えるかもしれません。この物語は、結局は、自分の外側にあるマトリックス(物差し)で成功を測ることが、心理的な痛みを招くということを描いています。「隣の芝生は青い」と思うかもしれませんが、本当に青いかどうかは分かりませんよね。もしかしたら、隣の人も自分の人生について不満を持っているかもしれません。つまり、この映画は、自分と他人を比較したり、他人の幸せや成功をうらやむことの不条理さを描いているのです。
もともとこのテーマにはワクワクするものを感じていました。特にブラッドが抱く不安が、常に彼の頭の中を占めているわけではなくて、アップダウンを繰り返すところが面白いと思いました。だとしたら、物理的に彼を小さな旅に出してみたらもっと面白いだろうと思いました。息子と一緒に大学を探しに行く、けれどもそこでやることといったら、ホテルにチェックインをしたり、飛行機のチケットを手に入れたりする、極平凡なことです。ところが、彼にとってはそれが引き金となって、いろんな気持ちが浮かんできて、それがアップダウンする。それは僕自身にも共感できることでした。
僕は今ハワイにいますが、嵐のときは家から出られません。そんなときは、頭の中で気持ちが激しくアップダウンします。じっとしていても、気持ちはアップダウンするわけです。ブラッドの場合もそれと同じ考え方です。それを表現するためにボイスオーバー(画面に現れない話者の声)を使いました。外側から見れば、たいしたことはしていなくても、内側から見れば、それこそ生死に関わるような強烈なドラマが起きているということを、ボイスオーバーを使うことによって表現しているわけです。
まず、最初に脚本を読んでくれたときに、ベンが「これは僕だ! 僕はブラッドだ」と言いました。僕は「君は大スターで、大金を稼いで、とても成功しているじゃないか」と返しましたが、そのときに、成功のバロメーターは人それぞれだけど、こういう気持ちに対する免疫はないのだと改めて感じました。
僕は、成功とは草の根キャンペーンだと思っています。スタートは自分から始まって、自分の一番近い人たちに広がっていき、そこからさらに大きくなっていく人もいます。大事なのは、自分のことをよく知っている人たちが、自分をどんなふうに見ているかだと思います。彼らの目に自分がどう映っているかが大切なのです。公的にとか、知らない人から成功していると思われることは、実はその人の本当の成功とはかけ離れた幻影なのかもしれません。だから、それを追い掛けてもすぐに消えてしまいます。そうしたことは、今のSNSなどでさらに加速していると思います。それが僕の哲学なので、今回の映画を通して、それが表現できていればいいと思います。
ドラマ2025年7月1日
ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む
ドラマ2025年6月29日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む
映画2025年6月27日
あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む
映画2025年6月27日
日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む
映画2025年6月27日
『F1(R)/エフワン』(6月27日公開) かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む