【夏目漱石の妻】長谷川博己「尾野さんはうらやましいぐらい自由」 尾野真千子「好きな人だと顔が近くても苦にならない(笑)」

2016年9月23日 / 17:09

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 明治の文豪・夏目漱石没後100年を記念したNHK土曜ドラマ「夏目漱石の妻」が24日、午後9時からスタートする(毎週土曜、連続4回)。明治という激動の時代を駆け抜けた夏目夫妻の姿を、妻・鏡子の視点からユーモアを交えて描いたホームドラマで、原案は、鏡子の言葉を筆録した「漱石の思い出」。

 頭脳明晰(めいせき)で几帳面、しかしとんでもなく気難し屋の漱石を演じるのはドラマに映画に大活躍の長谷川博己。一方、大らかで自分の考えをすぐに口にする鏡子を演じるのは実力派女優・尾野真千子。ともに試写会見では「アドリブが絶えない現場だった」「楽しかった」と口をそろえていた2人。そんな2人が、時にぶつかり合いながらも、固い絆で結ばれていく夏目夫妻にどう挑んだのか、現場の様子を語った。

──撮影中は「楽しかった」と伺いましたがエピソードを教えて下さい。

尾野 なんかね、いつも楽しかったんです。やっぱり2カ月ほどずっと撮影をしていると、その中でだんだん煮詰まって辛くなったり、愚痴が増えてきたりするじゃないですか。だけど長谷川さんとお芝居するのは全然、苦にならなかった。すごい長ぜりふでも、ちゃんと自分の言葉みたいにお芝居できたんです。もちろん大変さもありましたけど、楽しい方が勝っちゃいました。

長谷川 僕も同じですね。こんなに笑ったことないな、というぐらい笑いました。全然笑うようなところでないのに。庭のシーンで、僕が猫の真似をするところがあるのですが、まさに“狂気と笑いって紙一重だな”と感じました(笑)。俺、何やってるんだろう…?と思いながらも、きっと漱石と鏡子さんもそういう感じだったのかなという気がしました。

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──お2人で夏目夫妻を体現されたわけですね。

尾野 もちろん、いろいろと“苦労している2人”ではあるのですが、“楽しみながら”その苦労をやっているという感じなんですよね。

長谷川 日本人の持つ変な湿っぽさからはちょっと離れた2人というか、割とカラッとした夫婦の描かれ方で。もちろんしっとりとしたシーンもあるのですが、その両者のバランスがとても良かったです。

──鏡子さんが漱石に顔を近づけるシーンなどでは、楽しい撮影の雰囲気が画面にもにじみ出ていました。

尾野 好きな人だと顔が近くても苦にならない。でも、それぐらい近くでいたいと言いますか、長谷川さんから金之助を感じていたんだと思います。

──今回の役作りで、長谷川さんは事前に役作りのため資料などを読み込んだそうですね。

長谷川 皆さん、それぞれに夏目漱石の人物像ってあると思うんですよ。それに漱石についてはいろんな本も出ているし、だんだん分からなくなっちゃってきてね…。なので、まずは漱石の小説を読むことにしました。やっぱり作家の本質というのはその人の小説にしかないなと思っているので。結構大変でしたけど、いろんな作品を読みました。

──イメージは膨らみしたか?

長谷川 今回の原作は「漱石の思い出」。鏡子さんが書かれた漱石の姿なんです。でも、漱石の書いた「道草」を読んでみると、漱石、つまり男側から見た妻の姿というのもあって、「ちょっと妻は頭がおかしい」みたいなことも書いてある(笑)。やっぱり男と女ってそれぞれ言うことが違うし、結局のところ男女間のことは当の本人同士にしか分からない。だったら、尾野さんが演じる鏡子と、僕が演じる金之助(漱石)がその場で感じることを、大事に大事にやっていくのが一番いいかなと思いました。

──そこでお2人のアドリブが生まれたわけですね。

長谷川 尾野さんは、僕が何かをしたらいろんな形で返してくれるんです(笑)。そう来るか?と思って、また僕が何かをやると、また返してきて…。そういうことの繰り返しで楽しい現場でした。

 

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──長谷川さんは、事前に漱石が五高(現・熊本大学)の教師だった時に住んでいた熊本にも足を運ばれたそうですね。

長谷川 はい。漱石たちがどういう所に住んでいたのかを知りたかったし、鏡子が(精神不安定になり)飛び降りたとされる橋も見てきました。その場所を感じるだけでも違ってくると思うので。また、本当は小説家になりたかった漱石だけど、当時は学校の先生だったわけで、またその学校までの道のりが長いんですよ。こういう道を毎日通いながら、どういうことを考えたんだろうと、そういったことにも思いを巡らせてきました。

──そんな役作りもあってか、長谷川さんはまさに漱石に見えました。

尾野 すごかったですよね。いろんなことを勉強されてくるので、私が質問すると全部答えてくれるんですよ。これって、どうだったんだろうね?と聞くと、こうだったらしいよって。だから、なんでしょう…、もう、夏目漱石(本人)なんじゃないですか(笑)? なんでも教えてくれるので、私はそれに付いて行けばよかったので本当に楽でした。

──一方の尾野さんは、台本を読み込んで役作りをされるタイプですか?

尾野 (台本は)読み込んでもないの(笑)。本当に長谷川さんがやるお芝居を見させてもらうと、どうやると一番楽しいかなって、ほとんど考えずにやっちゃえるんですよ。

──その関係性がまさに漱石と鏡子さんの関係性だったのかもしれませんね。

長谷川 でも、尾野さんは僕から見て本当にうらやましいぐらい自由なんですよ。せりふもちゃんとカッチリしているのに、そこに縛られず何か柔らかい。それはおそらく、漱石も同じだったんじゃないかな。鏡子に対してちょっとうらやましいし面白いなって思っていたんだと思います。

尾野 そう。自分たちを通して私たちも“夏目夫妻”を見ていたような感じがします。実際、2人はこういう感じだったのかな?という話は現場でもよくしていました。

──自由な尾野さん、そしてある種の繊細さの感じられる長谷川さんと、お2人のイメージは今回の役にそれぞれぴったりだと思います。

長谷川 繊細というか、僕は細かいんですよ(笑)。

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──夏目漱石役のオファーが来た時の心境はいかがでしたか。

長谷川 歴代の夏目漱石、漱石をモデルとした人物を演じた方には仲代達矢さんや本木雅弘さんなどがいらっしゃいますが、すごくうれしかったです。僕はそのオファーがあった時、監督に「何で僕を選んでくださったのですか」と聞いたんです。そしたら監督は「いや、やっぱり、いま一番勢いがあるからね!」って(笑)。それだけかぁ…と思って(笑)。

尾野 ハハハ。

長谷川 まあ、本当はいろいろ理由があるのでしょうが、かわされちゃいました(笑)。僕は背が高いけど、夏目漱石というのは、自分の背の低さにもコンプレックスがあって、それがもとでロンドン留学ではみんなから見下されたりもして…。だから他の方も(候補として)考えられたとは思います。自分も何で選ばれたのか…(笑)。


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