エンターテインメント・ウェブマガジン
パラパラ漫画で知られるお笑い芸人の鉄拳が2012年に発表し世界的な人気を獲得した「振り子」が、中村獅童、小西真奈美らの出演で実写映画化された。ペーソスあふれる夫婦の物語はそのままに、さらにドラマチックな感動作に仕上がっている。3分ほどの小さな作品が大きな果実を生んだ経緯とパラパラ漫画にかける思いを鉄拳に聞いた。
映画が始まった瞬間に感極まって涙が出てしまいました。
みんなパラパラ漫画で知っているのに、前半の笑えるシーンからもう泣いていました。
もともとギャグっぽいパラパラ漫画は作っていたのですが、東日本大震災が起きて仕事が全部なくなっていたころに、あるテレビ局の方の提案でみんなを元気にするために「絆」という作品を作りました。他の局でも作りましたが、あらためて最初のテレビ局の方からその「絆」を超える夫婦の物語を作ってほしいと言っていただきました。それがこの作品です。
人生ってなんだろうと考えて、巣鴨や原宿で聞き込みをしました。子どものころに見ていた両親の姿や、みんなのいろんな話を混ぜて作りました。でも実は一番こだわったのは絵のアングル。普通のパラパラ漫画は横の動きか縦の動きかしかありませんが、横の動きの中に縦の動きを入れたいと考えているうちに、時計の振り子が使えると発想したんです。
この作品の評判を良くしてくれたのは、一般の人たち。みんなの感動のコメントがここ(実写映画化)まで来させてくれたんです。
なかったです。そのときはもう、うまくパラパラ漫画の方にシフトできたらいいなと思っていました。もともと僕は漫画家になりたかったので。
依頼主の要望やテーマを聞いたり、音楽のプロモーションビデオだったら、キーワードの歌詞を聞いたりしています。オファーが来るジャンルもいろいろで、恋愛物から人生物、いじめや自殺などの社会問題もあります。
あります。「振り子」以降のお仕事は大変ありがたいんですけど、自分がオリジナルとして考えている作品はまだひとつも出せていないので、自分が思い描いている動きのある作品を作りたい。映画祭に出品して、みんなの反応が見たいです。
本当にありがとうございます。パラパラ漫画から派生したものなので、映画化はハードルが高かったと思います。だからよくぞOKしてくださったなと思います。その思いも涙が出てきた理由のひとつだったのかもしれません。
ストーリーは単純なのですが、映画になるとこうなるんだというところを見てほしいです。ほんとこれは奇跡に近いです。
(聞き手=エンタメ批評家・阪清和)
映画『振り子』は28日から全国順次公開。
【鉄拳(てっけん)】漫画家やプロレスラーを目指していたが、劇団などを経て1997年から芸人として活動。近著に水野敬也との『あなたの物語』(絵を担当、27日発売)。
【阪 清和(さか・きよかず)】元共同通信社文化部記者。2014年から、音楽・映画・演劇・ドラマ・漫画・現代アートなどの批評、インタビュー、コラムを執筆。
映画2025年12月5日
戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月4日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む
ドラマ2025年12月1日
WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。 主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む
ドラマ2025年12月1日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年11月30日
今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む