【インタビュー】鉄拳「みんなのコメントがここまで来させてくれた」 パラパラ漫画「振り子」の実写映画化に感激の涙

2015年2月25日 / 15:33

 パラパラ漫画で知られるお笑い芸人の鉄拳が2012年に発表し世界的な人気を獲得した「振り子」が、中村獅童、小西真奈美らの出演で実写映画化された。ペーソスあふれる夫婦の物語はそのままに、さらにドラマチックな感動作に仕上がっている。3分ほどの小さな作品が大きな果実を生んだ経緯とパラパラ漫画にかける思いを鉄拳に聞いた。

「映画祭に出品して、みんなの反応を見たい」と話す鉄拳

-完成した映画を見て何を感じましたか?

 映画が始まった瞬間に感極まって涙が出てしまいました。

-皆さんの反応はいかがでしたか?

 みんなパラパラ漫画で知っているのに、前半の笑えるシーンからもう泣いていました。

-そもそもどうやってこの「振り子」という作品が生まれたのですか?

もともとギャグっぽいパラパラ漫画は作っていたのですが、東日本大震災が起きて仕事が全部なくなっていたころに、あるテレビ局の方の提案でみんなを元気にするために「絆」という作品を作りました。他の局でも作りましたが、あらためて最初のテレビ局の方からその「絆」を超える夫婦の物語を作ってほしいと言っていただきました。それがこの作品です。

-苦労されたでしょうね。

 人生ってなんだろうと考えて、巣鴨や原宿で聞き込みをしました。子どものころに見ていた両親の姿や、みんなのいろんな話を混ぜて作りました。でも実は一番こだわったのは絵のアングル。普通のパラパラ漫画は横の動きか縦の動きかしかありませんが、横の動きの中に縦の動きを入れたいと考えているうちに、時計の振り子が使えると発想したんです。

-その後「振り子」は大ブレークを果たしました。

この作品の評判を良くしてくれたのは、一般の人たち。みんなの感動のコメントがここ(実写映画化)まで来させてくれたんです。

-お笑い芸人として不安はありませんでしたか?

 なかったです。そのときはもう、うまくパラパラ漫画の方にシフトできたらいいなと思っていました。もともと僕は漫画家になりたかったので。

-今はどんなふうに作っていますか?

 依頼主の要望やテーマを聞いたり、音楽のプロモーションビデオだったら、キーワードの歌詞を聞いたりしています。オファーが来るジャンルもいろいろで、恋愛物から人生物、いじめや自殺などの社会問題もあります。

-ご自分で作ってみたいものはありますか?

 あります。「振り子」以降のお仕事は大変ありがたいんですけど、自分がオリジナルとして考えている作品はまだひとつも出せていないので、自分が思い描いている動きのある作品を作りたい。映画祭に出品して、みんなの反応が見たいです。

-出演の獅童さんと小西さんに。

 本当にありがとうございます。パラパラ漫画から派生したものなので、映画化はハードルが高かったと思います。だからよくぞOKしてくださったなと思います。その思いも涙が出てきた理由のひとつだったのかもしれません。

-皆さんにはどう見てほしいですか?

 ストーリーは単純なのですが、映画になるとこうなるんだというところを見てほしいです。ほんとこれは奇跡に近いです。

(聞き手=エンタメ批評家・阪清和)

 映画『振り子』は28日から全国順次公開。

 

【鉄拳(てっけん)】漫画家やプロレスラーを目指していたが、劇団などを経て1997年から芸人として活動。近著に水野敬也との『あなたの物語』(絵を担当、27日発売)。

 

【阪 清和(さか・きよかず)】元共同通信社文化部記者。2014年から、音楽・映画・演劇・ドラマ・漫画・現代アートなどの批評、インタビュー、コラムを執筆。

 


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