佐々木蔵之介「この映画を見た後で自分の気持ちがさまようようなところがあるので、誰かと一緒に見てほしいと思います」『名無し』【インタビュー】

2026年5月22日 / 08:00

-この話は、佐藤さんだからこそ出てきたものだという感じはありましたか。

 多分、この山田太郎というのをこんなふうに演じてみたいというところから始まったんだと勝手に思います。そこからストーリーを膨らませていったり、いろいろと作っていったのかもしれません。先ほど、城定(秀夫)監督と話をしましたが、「もともとはこういうストーリーではなかった」とおっしゃっていたので、佐藤さん自身がこんな役をやってみたいと思って書いた脚本から、さらに芽吹いて映画ができたのかなと思います。

-城定監督の演出はいかがでしたか。

 監督とは今回初めてお会いしたんですけど、現場ではポイントを抑えた上で、「じゃあここは一気に撮りましょう」とやってくださるので、とても速く進みました。安定感と緊張感が両方ある現場だったので、バランスのいい感じがしてとてもよかったと思います。あまりにもスピード感があり過ぎると、「撮れたの? 大丈夫?」なんて思うんですけど、今回はしっかりと的確にポイントを抑えた上でのことだったので、とてもやりやすかったです。

-完成作を見た印象はいかがでした。

 これはあくまでフィクションです。もちろん脚本を読んでいる時から、触るものが消えるなんて状況はフィクションだと思ったし、自分自身も出演しているので客観的にもそう思っていました。ところが映画を見た後に、フィクションなのに妙なリアリティーを感じたというか、気持ちは乾いているのに生温かい肌触りのようなものを感じて、これは城定さんの力なのかなと思いました。この作品をリアルに思えたということは、やっぱり何か心に突き刺さるものがあったんですよね。それが何なのかを具体的に言うのはなかなか難しいのですが、これを見たお客さんもそれぞれいろんなことを感じたり考えたりする映画になっていると思います。見た人がどんな答えを見つけるのかが楽しみです。

-観客や読者の皆さんに向けて、アピールや見どころも含めて一言お願いします。

 これは難しいな。逆にどんなふうに思われました?

-今、コンプライアンス云々が言われる時代に、よく作ったなと思いました。ただ、その奥にあるものについてはいろいろと考えさせられるところがありました。

 そうですよね。この映画を見た後で自分の気持ちがさまようようなところがあるので、誰かと一緒に見てほしいと思います。映画を見た後で、どう思ったのかを話し合える相手がいた方がいいし、面白いんじゃないかなと思います。答えは見つからなくてもいいんです。一緒にその場を共有するというか、一緒に体感してみてはどうだろうと思います。

-例えば、観客の1人として映画を見た場合も、客観的にはなれないものですか。

 なれないですね。やっぱり僕は自分の演技とかを見てしまいます。ただ、山田太郎に対しては、同情もしないけれど、彼があそこに行きついたように、人は大なり小なり孤独ではあると思うので、それについてはいろいろと考えました。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ (C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS

 

 

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