鈴木愛理「社会問題について触れるような作品に携わるのは初めてだったので挑戦になると思いました」『ただいまって言える場所』【インタビュー】

2026年1月22日 / 10:00

-お母さん役の大塚寧々さんとの共演はいかがでしたか。

 初共演でしたが、ドラマなどでずっと拝見していました。まさか自分に近い役柄でご一緒することができるとは思っていなかったので、すごくうれしい気持ちでいっぱいでした。寧々さんは普段からかっこいい方で、生きざまも現場での振る舞い方も、「私もこういう女性になりたい」と心の底から思える方で、ご本人にも「寧々さんみたいになりたいです」と伝えました。すると「やめなさいよ(笑)」と言われましたが、そんなおちゃめな感じもすごくかっこいいなと思います。お母さんというよりもお姉さんという感じでした。もう本当に大好きになりました。

-引きこもりのイメージとも重なる井伏鱒二の『山椒魚』が一つのメタファーになっているところがユニークでした。

 『山椒魚』については、本読みの時に少し話したんですけど、みんながそれぞれに自分の感じたままで受け取るのではないかと思いました。懐かしさもありつつ、こことつながるんだというのがちょっと驚きでもありましたし、今は何で不登校になっているのか理由が分からないことが多いらしくて、平成とは変わっているというのも勉強になりました。なので、それを表現する方法として『山椒魚』はぴったりなのかなと思いました。

-最後の方で、えりこが教頭先生(尾美としのり)に向かって持論を述べるシーンが印象的でした。

 あのシーンは撮影初日だったので私もとても印象に残っています。その後は、あのシーンはちゃんとつながっているのかな、大丈夫なのかなと思いながら撮影をしていました。ただ監督とは逆算しながら考えていたので、完成作を見た時は「えりこ、ちゃんと言えてるよ」と思ってほっとしました。先生の役で、さまざまな個性のあるベテラン俳優さんに名を連ねていただいたので、間近で勉強になることがたくさんありました。凝縮された濃厚な勉強の時間だったという印象です。

-本作は、ご自分にとって大きな作品になったという感じですか。

 考えることや、身を削る感覚に新しいものがありましたし、見てほしい人がいっぱいいるなと思いました。どういう状況であれ、自分の人生でほんのりと幸せを感じる部分や、自分は人間であることが感じられるような作品だと思いました。演じていて、いろんなことがあるけれど、やっぱり先生という存在も、一人の人間であり、誰かの子どもであるということをすごく思いながらえりこを演じました。そういう感覚をどの角度から見ても感じてもらえるんじゃないかなと思います。

-完成作を見た印象は?

 一言ではなかなか感想が言えないような、本当にいろんな角度から考えることができる作品だと思いました。いじめや不登校、「子ども部屋おばさん」といった問題だけにフォーカスを当てているわけではありません。だからといって家族愛だけを語った話でもないので、どのタイミングで誰と一緒に見るかで印象が変わる作品だと感じました。すごく重い題材なのに温かい気持ちになるというのが不思議だなと思いながら見終わりました。

-これから映画を見る観客や読者に向けて一言お願いします。

 この作品は、題材的にも受け取っていただきたい方が多いと思っています。試写を見た時に、今を一生懸命に生きている方や、お子さんがいる方には特に見ていただきたいなと思いました。「ただいま」と言える場所は、人それぞれ違うにせよ、みんなどこかにあるといいなと願っていると思います。そういう温かさを感じたいと思った時や、明日からもう一歩踏み出したいと思った時に、この映画を見ていただけたら、見終わった後は、考え方が少し明るくなるのではないかと思います。今回は、そういう気持ちも込めながら主題歌を歌わせていただいて歌詞も書きました。一緒に番組をやっている清塚(信也)さんが作曲・編曲を手掛けてくださり、ピアノも弾いてくださいました。私にとってもすごく思い入れのある作品になりましたし、母のことを考えて歌詞を書いた部分もあるのでメモリアルになりました。歌も含めて受け取ってもらえたらうれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

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