原田美枝子、松田美由紀監督「映像のワンカットワンカットを体感してもらいたいと思います」「たくさんの謎がある映画なので、ぜひそれを解読してください」『カラノウツワ』【インタビュー】

2026年1月15日 / 08:00

-今回は、初老の謎の女性と年下の男の子の話でしたが…。

松田 これは、ラブストーリーとか、いろいろな解釈で見る方がいると思いますが、実はだまし合いの話なんです。主人公の文子は、もともとは詐欺師だったのかもしれない。お金を元手に何かを搾取したりしていたのかもしれない。だから、偶然かばんを忘れたと言ったのに、あの中に大金が入ったような封筒を持っている。また(佐藤)緋美くんが演じた土井の裏ストーリーも作りました。人殺しをした親に育てられて、親がずっと刑務所に入っているんです。それで、ずっと人殺しの息子と言われて、自分は何も悪いことはしていないのに迫害を受けていて、なかなかいい就職もできないという日々を送っている。そんな2人が、お金というキーワードで結びつくという話です。文子の方は、お金があると信じ込ませて、引っ張って、そこに恋愛みたいな空気を作っていくんだけど、実は、土井は土井でそのお金を盗みにいくという。ぱっと見、老女と若い男の人との恋愛模様みたいな空気が漂っているけどそうじゃないですよと。だから、深く読んでもらうと、いろいろなキーワードがあって、ちょっと謎の多い宝箱みたいになっています。

-原田さんは演じてみていかがでしたか。

原田 もしだますのだとしても、その時はだましていることは絶対に見せないし、全部が本当かもしれないし、全部がうそかもしれないというのが面白いと思ってやっていました。だけど、互いが何か一瞬ひかれ合うというのは真実な気がします。そこはすごく大事にしました。

松田 私の知り合いに、「『雨月物語』みたいだ」と言う人がいました。こちらから見るとこうだけど、あちらから見ると…。全部が現実ではないお化けの世界だったんじゃないかと。実は、17分版の作品もあって、それはさらにそういうことを強く感じさせるように作っているんですけど、MIRRORLIAR FILMSに収録するに当たり15分にしました。そういう裏ストーリーもあるので、長編で撮りたいですね。

-パチンコ屋を舞台にした理由は?

松田 パチンコって覚醒する場所、自分の現実を忘れられる場所だと思うんです。音とか色とか、何か不思議な世界に連れていってくれるからそこに長くいたいと思うんだろうなと。これは息子の友達の実話が基なんです。その人は実際にパチンコ屋で働いていたんです。それもあってパチンコという題材が面白いなと思いました。それに、やっぱりパチンコは日本独特の文化というか世界観なので、どこかの映画祭に出すとしても面白いと思いました。

原田 文子さんのせりふで、パチンコについて「『大当たり』って褒められるじゃない。あれがうれしいのよ」と言うのもすごく面白い。普段、全くそういうことがない生活をしている女の人だから。

松田 当たるとファンファーレが鳴るって、自分の人生にはそういうことはないじゃないですか。だからあのせりふを入れたんです。

-観客や読者に向けて、見どころも含めて一言ずつお願いします。

松田 今までの人生でやってきたいろいろなことが全部実った感じがしたので、この年齢になって作品が撮れたことは本当に幸せでした。たくさんの謎がある映画なので、ぜひそれを解読してください。いろんな解釈をして楽しんでいただきたいです。

原田 頭や理屈で考えるのでなく、言葉の解釈でもなく、映像のワンカットワンカットを体感してもらいたいと思います。体感することで、行間や五七五の言葉のないところが見えてくるみたいに、映像も語れる気がします。だから、いいのか悪いのかと、白黒をつける必要もないし、何かを味わってほしい。自分が映画の中に入って体感してほしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

「カラノウツワ」(C)2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

中川大志、三谷幸喜の最新作は「現代にも通ずる、過去の出来事として片付けられないもの」を描く PARCO PRODUCE 2026「アメリカン・ドリーム」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年8月8日

 三谷幸喜が長年温めていたテーマを豪華キャストで描く、渾身(こんしん)の書き下ろし新作舞台「アメリカン・ドリーム」が8月15日からPARCO劇場で上演される。本作は、1940年代後半のアメリカを舞台に、反共産主義に基づく“赤狩り”によって告 … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#韓国人はなぜ「呼称整理」をするのか、「脱出おひとり島」が映す韓国社会

2026年8月7日

▽年齢公開のあとに始まる韓国社会  そして、最終日前夜。  参加者たちはキャンプファイヤーを囲み、打ち解けたおしゃべりの中で、それまで隠してきた年齢と職業を、一人ずつ明かしていく。「実は◯歳です」の一言ごとに、歓声と悲鳴が上がる。年上だと思 … 続きを読む

福原遥「自分の大切な人を大事にして生きていこうと思いました」【インタビュー】『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』

映画2026年8月6日

-細田佳央太さんと倍賞千恵子さん。共演したお二人の印象を。  細田さんとは初共演でしたが、お芝居を一緒にさせていただいてとても楽しかったですし、初めてとは思えないぐらいの安心感がありました。細田さんが演じた涼も難しい役で、百合とはそれぞれの … 続きを読む

【映画コラム】7月の公開映画から

映画2026年8月3日

「トイ・ストーリー5」(7月3日公開)★★★ おもちゃを取り巻く“変化”を描く  持ち主の少女ボニーの成長を見守ってきたカウガール人形のジェシー。だが、タブレット端末「リリーパッド」の登場で、ボニーは画面の世界に夢中になり、おもちゃと遊ぶ時 … 続きを読む

「ConChu!」が大昆虫展アンバサダーに就任! ハロプロ研修生から羽化した4匹たちの、その先とは

インタビュー2026年7月31日

応募1800件超から生まれたユニット名 -「ConChu!」は、昆虫の世界を「コンコン」とノックするイメージと、かわいさを表現した「Chu」を組み合わせた名前だそうですね。「こんちゅ!」と4人のあいさつにも使われていますが、ポーズはどのよう … 続きを読む

page top