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功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものがあることは、メンタル的には心強いものがあったと思います。原作を読んだ時にも思いましたが、田丸は絵を描くことが本当に好きなんだというのは伝わってきました。そういうものを戦場でも大事にできたことは、今の価値観や感覚では測れるものではありませんが、兵士ではない21歳の等身大の自分に戻れる時間でもあったのかなと思います。
そこは田丸と感覚は近かったと思います。僕もこの作品に出合って、初めて功績係というものを知ったので。この当時は、国のために命を落とすことが何よりも誉れとされる時代なので、うそも交えながら、いかに勇士として遺族に届けるかということです。その是非については、当時もそうですし、今もなかなかはっきりとは白黒が付けられないという感覚はあります。うそをつくことはもちろんいいことではありませんが、ただ、そのうそによって残された家族が救われた気持ちになるのであれば、それは必ずしも悪いとは言い切れないし、非常に複雑な思いがします。
はい。やはり声だけの芝居というのは、普段自分がいる環境からすればイレギュラーなものなので、ブースの中でマイクとモニターに向き合うという部分では、相当自分のイマジネーションを働かせないとできないので、そういう意味でも、実際ペリリュー島に行って、千人洞窟という兵士たちが潜伏していた場所の中に入って、まだガラスの破片や、痕跡みたいなのがそのまま残っているのを見たり、洞窟の中の気温や湿度も感じました。森の中を歩いていても戦車がそのままの姿で残っていたりとか、そういうものを実際に目にして、自分の肌で感じていると想像もしやすいですし、自分の目で見て確かめているからこそ、せりふではなくきちんと言葉として出てくる部分もあります。あとは、例えば歴史上の人物を演じる時にはお墓参りをしますが、それは、一緒に芝居をするのに共演者の方にごあいさつをしないまま芝居をするみたいな感覚があるからです。今回もそういう意味も含めてうかがったというのもありました。
実際にアフレコをする時に、自分の中で現地を訪れたことが大きく作用しました。絵コンテの状態のものが映像としてつながっているだけだったのですが、それでも実際に自分の目で見た景色や、肌で感じた温度や踏みしめた地面などの感覚があるのでイメージしやすかったです。
原作の魅力の一つでもある、絵柄的にも間口が広いところは、しっかりと踏襲しています。内容としては当時の現実が重く胸にくるものにはなっていますが、気軽に劇場に足を運んでほしいと思います。そうすれば、自分たちの世代もそうですけど、いろんな世代の方に、知っていただけるきっかけになるんじゃないかなと思うので。だから、絵柄がかわいいからとか、何か面白そうだからぐらいの気持ちで見に来ていただけたらうれしいです。見に来てくださった方が、こうした出来事を知ってくださった上で、では自分はこれをこういうふうにつないでいこうかと考えてくだされば、それはすごくうれしいことです。だからまず、知るきっかけの作品となればいいなと思っています。最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)武田一義・白泉社/2025「ペリリュー 楽園のゲルニカ」製作委員会
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