板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

2025年12月5日 / 16:57

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。

 功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものがあることは、メンタル的には心強いものがあったと思います。原作を読んだ時にも思いましたが、田丸は絵を描くことが本当に好きなんだというのは伝わってきました。そういうものを戦場でも大事にできたことは、今の価値観や感覚では測れるものではありませんが、兵士ではない21歳の等身大の自分に戻れる時間でもあったのかなと思います。

-功績係という役割についてはどのような印象がありましたか。

 そこは田丸と感覚は近かったと思います。僕もこの作品に出合って、初めて功績係というものを知ったので。この当時は、国のために命を落とすことが何よりも誉れとされる時代なので、うそも交えながら、いかに勇士として遺族に届けるかということです。その是非については、当時もそうですし、今もなかなかはっきりとは白黒が付けられないという感覚はあります。うそをつくことはもちろんいいことではありませんが、ただ、そのうそによって残された家族が救われた気持ちになるのであれば、それは必ずしも悪いとは言い切れないし、非常に複雑な思いがします。

-実際にペリリュー島に行ったそうですが、それはこの映画のためでしたか。

 はい。やはり声だけの芝居というのは、普段自分がいる環境からすればイレギュラーなものなので、ブースの中でマイクとモニターに向き合うという部分では、相当自分のイマジネーションを働かせないとできないので、そういう意味でも、実際ペリリュー島に行って、千人洞窟という兵士たちが潜伏していた場所の中に入って、まだガラスの破片や、痕跡みたいなのがそのまま残っているのを見たり、洞窟の中の気温や湿度も感じました。森の中を歩いていても戦車がそのままの姿で残っていたりとか、そういうものを実際に目にして、自分の肌で感じていると想像もしやすいですし、自分の目で見て確かめているからこそ、せりふではなくきちんと言葉として出てくる部分もあります。あとは、例えば歴史上の人物を演じる時にはお墓参りをしますが、それは、一緒に芝居をするのに共演者の方にごあいさつをしないまま芝居をするみたいな感覚があるからです。今回もそういう意味も含めてうかがったというのもありました。

-現地を訪れたことはアフレコに影響を与えましたか。

 実際にアフレコをする時に、自分の中で現地を訪れたことが大きく作用しました。絵コンテの状態のものが映像としてつながっているだけだったのですが、それでも実際に自分の目で見た景色や、肌で感じた温度や踏みしめた地面などの感覚があるのでイメージしやすかったです。

-これから映画を見る観客や読者に向けて、一言お願いします。

 原作の魅力の一つでもある、絵柄的にも間口が広いところは、しっかりと踏襲しています。内容としては当時の現実が重く胸にくるものにはなっていますが、気軽に劇場に足を運んでほしいと思います。そうすれば、自分たちの世代もそうですけど、いろんな世代の方に、知っていただけるきっかけになるんじゃないかなと思うので。だから、絵柄がかわいいからとか、何か面白そうだからぐらいの気持ちで見に来ていただけたらうれしいです。見に来てくださった方が、こうした出来事を知ってくださった上で、では自分はこれをこういうふうにつないでいこうかと考えてくだされば、それはすごくうれしいことです。だからまず、知るきっかけの作品となればいいなと思っています。最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)武田一義・白泉社/2025「ペリリュー 楽園のゲルニカ」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

見上愛「医療従事者の皆さんに対するリスペクトが増しました」上坂樹里「最近、『顔つきが変わったね』と言われます」連続テレビ小説「風、薫る」第1週試写会見

ドラマ2026年3月9日

 3月9日、東京都内のNHKで2026年前期の連続テレビ小説「風、薫る」の第1週試写が行われ、ダブル主演を務める見上愛と上坂樹里がメディアの取材に応じた。  「風、薫る」は、田中ひかるの『明治のナイチンゲール 大関話物語』を原案に、明治時代 … 続きを読む

「リブート」「このドラマは誰かを信用した瞬間が一番危ない」「リブート後は、定期的にメンテナンスに行かないといけないんだね」

ドラマ2026年3月9日

 日曜劇場「リブート」(TBS系)の第7話が、8日に放送された。  本作は、最愛の妻の死をめぐってうそと真実が入り乱れ、日曜劇場史上類を見ない怒濤のスピードで展開していく“エクストリームファミリーサスペンス”。鈴木亮平が善良なパティシエと悪 … 続きを読む

「パンダより恋が苦手な私たち」「一葉と椎堂先生はすれ違いのまま終わってしまうのか」「これは一葉の言動で背中を押されて前向きに進み出した人たちのドラマでもある」

ドラマ2026年3月8日

 「パンダより恋が苦手な私たち」(日テレ系)の第9話が、7日に放送された。  本作は、仕事に恋に人間関係…解決したいなら“野生”に学べ! 前代未聞、動物の求愛行動から幸せに生きるためのヒントを学ぶ新感覚のアカデミック・ラブコメディー。(*以 … 続きを読む

「DREAM STAGE」“吾妻”中村倫也のNAZEを思う行動に涙腺崩壊 「吾妻PDは不器用で優し過ぎる」「早く戻って来て」

ドラマ2026年3月8日

 中村倫也が主演するドラマ「DREAM STAGE」(TBS系)の第8話が、6日に放送された。(※以下、ネタバレを含みます)  本作は、K-POPの世界を舞台に、“元”天才音楽プロデューサーの吾妻潤(中村)が、落ちこぼれボーイズグループ「N … 続きを読む

夏帆「AIによって、誰でも一線を踏み越える可能性はある」AIを題材にしたドラマに主演「ある小説家の日記」【インタビュー】

ドラマ2026年3月6日

 現在、社会的に大きな注目を集める「AI」。そのAIを題材にしたサスペンステイストのヒューマンドラマ「ある小説家の日記」が、3月8日夜11時からNHK総合で放送される。  人気ミステリー作家・芹澤環(板尾創路)の事故死から1年。新作で編集を … 続きを読む

Willfriends

page top