城田優が語るミュージカル映画の魅力 「ただ画面を見ていれば物語に入り込める」【インタビュー】

2025年10月29日 / 08:00

 本場ブロードウェイの舞台を中心に数々の傑作を映画館で楽しめる「松竹ブロードウェイシネマ」が、10月31日から「松竹ブロードウェイシネマ 2025秋」と題した連続上映を開催。トニー賞などを受賞した「エニシング・ゴーズ」「インディセント」「タイタニック」の3作品が上映される。今回、アンバサダーに就任した城田優がそれぞれの作品の魅力、そしてミュージカルへの思いを語った。

城田優 【ヘアメーク:Emiy/スタイリスト:黒田領】 (C)エンタメOVO

-アンバサダーに就任した心境を聞かせてください。

 お選びいただき光栄でございます。これまで自分が知らなかった作品やブロードウェイまで行かないと見ることができなかった作品を一足早く見させていただけることはとてもうれしいことで、ご褒美のようなお仕事だなと思います。

-映画館でブロードウェイミュージカルを見ることができることというのはすごくぜいたくな機会ですよね。

 もし、ニューヨークに行ってブロードウェイミュージカルを見ようと思うと、手間もお金もかかります。特に円安の世知辛い世の中の今、飛行機代、チケット代など何十万円もかかるので、映画館とでは雲泥の差があります。少しの時間と少しのお金を出せば、高く評価されている本場ブロードウェイの数々の作品を間近で見ることができるというのは、すごくありがたい機会です。こうした試みがどんどん広がっていって、ミュージカルの魅力がより多くの方たちに届けばいいなと思っております。

-それぞれの作品の見どころを教えてください。

 「エニシング・ゴーズ」は、とにかくド派手なナンバーがたくさんある、伏線回収型の王道コメディーです。これぞミュージカルという作品なので、明るい気持ちになりたい方にもおすすめです。

 「インディセント」は、上質な演劇寄りの音楽劇だと僕は思います。あえて「ミュージカル」にカテゴライズしたくない。もちろんミュージカルなんですよ。歌も歌いますし、音楽もたくさんありますから。ですが、登場人物たちの心情を歌で表現しているというよりは、スパイス的に音楽を使っている印象が強いんです。なので「音楽劇」という印象があります。ユダヤ人迫害の物語なので、ストーリーもテーマもめちゃくちゃ重たいですし、時代背景的にタブーとされていた同性愛なども扱っているのですが、そこにファンタジックな演出があったり、ふんだんにジョークが入っていたりして、少しマイルドに見ることができます。笑いどころもたくさんあって、とても重いテーマを扱っているのに、笑い声がたくさん聞こえる作品です。きっと笑いがないと見るのがしんどくなってしまうと思います。ですが、リアリティーをなくさずに、大事な部分は守りつつ、飽きずに見られるようエンタメとして成立させようと作られた、とても上品で上質な作品でした。ミュージカルはあまり得意ではないという人にも、重いテーマを扱った作品が苦手な人にも見やすくなっていると思います。おすすめです。

 「タイタニック」は、モーリー・イェストンの音楽がとても印象的でした。物語は誰もが1度は聞いたことや見たことがあると思いますが、こうしてミュージカル映画として見ることでタイタニック号に乗っている人たちの心と同化して、すてきな旅がスタートするところから人生の終わりまでを感じていただけると思います。物語のラストで、亡くなった人たちが出てきて会話をするシーンがあるのですが、胸が痛くなるやり取りが多く、本当にたくさんの人たちが乗っていらして、事故の犠牲になられたということを改めて感じます。切なくなる作品ですし、見るにはエネルギーがいると思いますが、胸に迫る物語です。華やかなシーンも多いのですが、実は「インディセント」よりも「タイタニック」の方が重いと僕は思います。なので、元気があるときにぜひ見てもらいたいですね。落ち込んでいるときに見るとより落ち込んでしまいますので。

-城田さんご自身は、映画館でミュージカルを見る場合、どんなところに注目して見ているのですか。

 (ステージ上で上演されている生の)ミュージカルを見るときは、自分でどこを見るかを選ぶことができます。選択肢がたくさんある中から、自分で見たいように見るのですが、映画館で見るミュージカル映画は、あらかじめディレクションがされている状態のものです。ですので、どこを見ていいのか分からないとか、たくさんの人がステージに立っているからどうしていいか分からないというときにはこれほどありがたいことはない。ただただ画面を見ていれば物語に入り込めますから。もし、「この人の表情も見たい」「この人の姿をもっと追いたい」という気持ちが出てくるようなら、それは劇場に足を運んで、生のミュージカルを見ていただければと思いますが、その入り口として、ディレクションされた状態でただただ楽しめばいいという状態の映画館で見られるミュージカルっていうのは、初心者にとても良いと思います。

-現在、城田さんが出演しているドラマ「推しの殺人」(毎週木曜よる11時59分に読売テレビ・日本テレビ系)が放送中です。ドラマの現場の面白さについても聞かせてください。

 映像と舞台は目の前にお客さんがいるかどうかが圧倒的な違いです。舞台では、稽古期間を通してチームの結束力や力が高まって本番を迎えられますが、映像では瞬発力が大事になります。もちろんリハーサルはありますが、どちらかというとそのときに感じているものを一瞬で出して、カットがかかればそこで終わるというのが映像の魅力だと思うので、全く違うものです。現在、放送中の「推しの殺人」はサスペンスですので、含みのある表現も多く、ドロドロした先の分からない物語を楽しんでいただけたらと思います。

 そして、1月22日からはドラマとは全く違う、キラキラした華やかな世界を描いた、ミュージカル「PRETTY WOMAN The Musical」に出演します。「エニシング・ゴーズ」に負けないくらいのとびきりのパフォーマンスと歌を楽しんでいただければと思います。きっと全く違った姿を見ていただけるのではないかと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 「松竹ブロードウェイシネマ 2025秋」は、10月31日から全国で順次公開。

城田優 【ヘアメーク:Emiy/スタイリスト:黒田領】 (C)エンタメOVO


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語」』(6)オノマトペに浸かる

2025年10月28日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼それは漫画本だった  玉秀斎が小 … 続きを読む

草なぎ剛「やっぱりすごい…。心からリスペクトしています」 風吹ジュン「学ぶことも多く、新しい意識が生まれるドラマ」「終幕のロンド」【対談インタビュー】

ドラマ2025年10月27日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。このドラマは、遺品整理人の鳥飼樹(草なぎ剛)が、遺品整理会社の仲間たちと共に、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添い … 続きを読む

沢村一樹「勝負は“確認作業”」 孤高の馬主が見つめる“真の競馬”とは 「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年10月27日

 勝っても笑わず、負けても怒らない。日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」で沢村一樹が演じるのは、大手人材派遣会社を率いる敏腕経営者で、日本競馬界有数の馬主の一人、椎名善弘。冷静沈着で、どんな勝負にも動じない男だ。そんな椎名を演じるに当たり、本 … 続きを読む

長尾謙杜&山田杏奈&石原慎也(Saucy Dog)が話題の映画でタッグ!「主題歌が主人公たちの気持ちを表している」『恋に至る病』【インタビュー】

映画2025年10月24日

 10月24日公開の『恋に至る病』は、TikTokで話題になるなどティーンを中心に絶大な支持を集める斜線堂有紀のベストセラー小説を映画化した話題作だ。  内気な男子高校生・宮嶺望と学校中の人気者・寄河景。同じクラスになった2人は距離を縮めて … 続きを読む

市毛良枝「現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらいいなと思います」『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』【インタビュー】

映画2025年10月23日

 祖父の他界後、大学生の拓磨は、夫に先立たれて独り残された祖母・文子と同居することになった。ある日、拓磨は亡き祖父・偉志の書斎で、大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した妻・文子へのサプライズだった。市毛良枝とグローバルボーイズグループ … 続きを読む

Willfriends

page top