鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

2025年7月10日 / 16:00

-2度の災害を経験して行き場のない怒りを抱いている山本が、ボランティアの若者と出会って心が解けていって笑顔を浮かべる場面が印象的でしたが、若者役の小林虎之介さんとの絡みはいかがでしたか。

 僕は若い人と芝居をするのがすごくうれしいんです。今の若い人の感性などをいろいろと学べたり、影響を受けたりすることが多いものですから。彼の出番は遅かったんですけど、初日からずっと現場にいて撮影を見ていたので熱心だなと思いました。撮影に入ると非常にナチュラルでリアリティーのある芝居をするので、相手役としてとてもやりやすかったです。作り物ではない芝居になったと思います。そういう意味でも、彼にはとても感謝していますし、いい仕事ができたと思いました。

-昭和の時代から長い間いろいろな現場を経験してきて、時代も変わった中で、下の世代に何かを伝えていこうという気持ちはありますか。

 年を重ねたから芝居がよくなるかといったら決してそうではないと思います。確かに年を重ねたなりの味は出るのかもしれませんが、芝居がうまくなったということではないような気がします。若い人たちは姿を変え、芝居を変え、時代も変わってきているわけですが、そういうところから刺激を受けられるという意味ではありがたい仕事だと思います。この映画のタイトルは『生きがい IKIGAI』ですけれど、僕は芝居をしている時が一番生きがいを感じるので、特に若い人との出会いは面白いと思っています。

-ご自分でも、影響を受けて変わってきたと思うところはありますか。

 こうして頭も白くなって、うそではない存在でいられたらそれに越したことはないと思います。そういう意味では、いい台本と巡り合い、いい監督や演出家、芝居仲間と出会えることが一番うれしくて面白いところだと思います。それと、若い人と芝居をしていてもあまり年齢差は考えないです。自分は今74歳ですけど、年を取ったという感じもあまりしないので、いろんな人から刺激を受けたり、逆にこちらから刺激を与えたりというキャッチボールができるのが面白いです。

-『生きがい』というタイトルに込められた意味について、どのように感じましたか。

 最初は「黒鬼」というタイトルでしたが、撮り終わってから『生きがい IKIGAI』に変わりました。生きがいというのは何でしょうね。この黒鬼=山本信三の場合には、若い青年との心の通い合いから生きがいを再発見しますが、そういう人と人との出会いから生まれてくるものなのかなと思います。長年1人で孤独に暮らしてきた男が、孫のような青年と心を通わせたことで、もう一度ちょっと前に出てみようか、人生を出直してみようかと思う。そういう世代を超えた人間同士の心の触れ合いが大切なのだと思います。

-観客や読者に向けてのメッセージをお願いします。

 このショートフィルムは、宮本亞門さんが作、監督、編集を全部お一人でやられているわけですが、亞門さんは地震の後にボランティアとして能登にも行ってらっしゃった。ですから、そういう意味で、能登の人たちに何とか元気になってもらいたい、立ち直ってもらいたいという思いも強く持っていらっしゃる方なので、そういう監督の作品にご一緒できたことは、自分にとっても財産の一つになりました。大きな仕事だったと思います。自分では、ドラマとドキュメンタリーの間みたいな感覚があったので、演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います。山本は自分と年代が大体同じという設定だったので、自分の心情みたいなものも投影されている部分があります。それと、初老の人間を扱った作品も、そんなに多くはないですよね。そういう意味でも、非常にやりがいがありました。年寄りのリアリティーみたいなものを感じていただければと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)「生きがい/能登の声」フィルムパートナーズ

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ドラマ「LOST10」脚本・奥寺佐渡子×監督・塚原あゆ子 横浜流星と小栗旬が演じるバディの魅力と制作の舞台裏を語る【インタビュー】

ドラマ2026年10月16日

-横浜さんと小栗さんが演じたことで、キャラクターの印象は変わりましたか。 塚原 小駒は田舎の刑事で出世したいという設定があって、うだつが上がらない感じに近いのかなと思っていたのですが、横浜さんは身体能力に長けていて山をぐんぐん登るので、その … 続きを読む

磯村勇斗「吉田監督の世界に入れることが楽しみでした」吉田恵輔監督「磯村くんは思考が自分に近い」初顔合わせの舞台裏『mentor』【インタビュー】

映画2026年10月15日

-そして、子どもの頃、一緒に事件を起こして以来、疎遠になっていた拓海との再会は、アーチェリーに打ち込む龍之介の人生を次第に狂わせていきます。 磯村 末澤くんとは初共演で、龍之介と拓海が再会する場面は僕たちにとっても初めて一緒にお芝居するシー … 続きを読む

キタオ・サクライ監督「自分が夢中になってプレーしていた、子どもの頃の高揚感を生かしたいと思いました」『ストリートファイター/ザ・ムービー』【インタビュー】

映画2026年10月15日

-人気ゲームを映画化するプレッシャーは? 映画化に際して、気を付けたことや心掛けたことはありましたか。  もちろんプレッシャーはありました。正統な撮り方としては、きちんとシリアスに向き合って、原作というか元ネタを、すごくリアルなアクションや … 続きを読む

山下幸輝、初めての舞台出演への思い「踏み込んで挑戦しよう」 福田雄一演出のコメディーで「笑わせたい」ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年10月15日

-主演を務める岩田さんとは以前に共演経験がありますね。岩田さんの印象を教えてください。  共演はしていてもお芝居での絡みはなかったんです。なので、これから仲を深めていけたらと思っていますが、ダンスがめちゃくちゃうまい方だなと思います。僕とは … 続きを読む

西川美和監督、小八重葵美「子どもたちが本当にみずみずしくて素晴らしいので、ぜひそれを映画館に見に来ていただきたいと思います」『わたしの知らない子どもたち』【インタビュー】

映画2026年10月15日

-今回は、二階堂ふみさんが演じた教師の曽根と生徒の琴子という2人のヒロインがいましたが、その意図はどこにあったのでしょうか。 西川 曽根先生をもうひとつの主軸にしようと思ったのは結構後からでした。最初は、子どもたちだけのサバイバルの物語とし … 続きを読む

page top