南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

2025年7月4日 / 12:00

(C)武田綾乃/講談社 (C)2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

-陽彩はいわゆる“毒親”の母と2人で暮らすうち、自分の人生に期待を持てなくなってしまった人物です。そういう役と向き合うお気持ちはいかがでしたか。

 陽彩にとって、親や家族は、居場所であると同時に、自分を縛る呪いのようなものでもあったと思うんです。そういうことって、毒親に限らず、いろんなところにあるんじゃないかなと。自分が身を置いている環境や大切な人、自分自身も含め、居場所になっているものが、時として自分を縛るものになってしまう。

-その点で、陽彩の境遇が理解できたということでしょうか。

 陽彩は、自分が不幸であることに意味を見いだしている女の子で、そういう不安がむしろ自分の安心材料になっているんですよね。私の両親が毒親というわけではありませんが、似たようなところは自分にもあるので、陽彩の気持ちがよくわかりました。

井樫 “毒親”というと特別な印象を受けますが、誰もが他者と関わる中で、うまくいったりいかなかったり、傷ついたり傷つけられたりということを繰り返しながら日々を過ごしていると思うんです。その点、種類は違っても人間関係における痛みであることに変わりはない。だから、劇中にも「不幸は他人と比較できることじゃない」というせりふがあるように、特別なものとして描きたくなかったんです。もちろん、当事者の体験を記した本などを読み、事前にしっかり勉強した上でのことですが。

-劇中では、親しくなった陽彩と雅が自転車の2人乗りをするシーンが、2人の関係を象徴していて印象的でした。原作にはない映画独自のシーンですが、その狙いを教えてください。

井樫 映画にする以上、2人の関係を動きで表現したかったんです。その点、自転車であれば、2人の距離が近いにも関わらず、お互いの顔が見えない面白さがある。しかも、どちらが前に乗るかで2人の関係も表現できるなど、効果的に使えるんじゃないかなと。そんなふうにいろんな観点から考えて、自転車を使うことにしました。

 私は自転車が苦手な上に、2人乗りなんてしたことないので、最初はヨロヨロしてしまって(笑)。撮影前に練習したおかげで、なんとか無事に運転できるようになりました。

-一見、女性同士の友情物語のようですが、この作品にはそれだけにとどまらない奥深いメッセージ性があります。その点、この映画をどんな人たちに見てもらいたいとお考えでしょうか。

井樫 陽彩が自分で人生を選択できるようになるまでの姿を描いた物語なので、さまざまな人間関係に悩む方の心に少しでも残り、前に進む力になってくれたら…と願っています。

 生きることが難しい今の時代、人間関係に悩む方はたくさんいらっしゃると思うんです。この映画が、そんな人たちに寄り添えたらうれしいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)武田綾乃/講談社 (C)2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

佐々木蔵之介「この映画を見た後で自分の気持ちがさまようようなところがあるので、誰かと一緒に見てほしいと思います」『名無し』【インタビュー】

映画2026年5月22日

-この話は、佐藤さんだからこそ出てきたものだという感じはありましたか。  多分、この山田太郎というのをこんなふうに演じてみたいというところから始まったんだと勝手に思います。そこからストーリーを膨らませていったり、いろいろと作っていったのかも … 続きを読む

宮野真守&神山智洋、初共演の二人が作り上げる、劇団☆新感線のドタバタ音楽活劇ミステリー 「多幸感にあふれた作品をお届けしたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年5月22日

 宮野真守と神山智洋(WEST.)が出演する、2026年劇団☆新感線46周年興行・夏公演 SHINKANSEN☆RSP 怪奇骨董音楽劇「アケチコ!~蒸気の黒ダイヤ、あるいは狂気の島~」が、6月12日から上演される。本作は、脚本に劇作家の福原 … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第19回「過去からの刺客」慶の心を動かした小一郎の言葉【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年5月21日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=羽柴秀吉/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。5月17日に放送された第19回「過去か … 続きを読む

唐沢寿明「こんなにひどい男をやってよかったのかなという後悔はちょっとありました」『ミステリー・アリーナ』【インタビュー】

映画2026年5月21日

-解答者役の人たちはいかがでしたか。  彼らも、ある意味バチバチでした。例えば、玉山(鉄二)くんがきっちりやると、次に出てくる人に、自分はもっと面白くやってやろうというスイッチが入ります。みんな真面目な人だから、負けないようにやるんです。そ … 続きを読む

川島鈴遥、森田想「この映画は、ちょっと落ち込んだ時とかに見るといいかもしれません。きっと心が軽くなります」【インタビュー】『いろは』

映画2026年5月21日

-本作は長崎地方が舞台でしたが、最近、地方色が強い映画が多いと思います。その辺りはどう感じますか。 川島 もし自分が旅行で行くとしても、ここは見つけられないかもって思うような場所でも撮影したので、普段見られない景色や美しい景色を見られたこと … 続きを読む

page top