中園ミホ「皆さんに“やなせたかしワールド”を知っていただきたい」連続テレビ小説「あんぱん」脚本家が作品に込めた思い【インタビュー】

2025年5月1日 / 16:57

(C)NHK

-のぶのモデルになったやなせさんの奥様の暢さんについてはいかがでしょうか。

 打ち合わせを重ねた末、朝ドラらしく主人公は女性で、ということで、のぶが主人公ということになりました。暢さんのことはこれまで存じ上げませんでしたが、今回の取材を通じて“ハチキンおのぶ”、“いだてんおのぶ”と呼ばれたパワフルな奥様がいたからこそ、やなせさんの人生があったことを知ったのも、私にとっては発見でした。だから、暢さんに関する記録は多くありませんが、しっかり取材した上で、のぶと嵩、2人の人生を並行して描いていくつもりです。

-実際にやなせさんと暢さんが出会ったのは、新聞社で働き始めてからだそうですが、のぶと嵩を幼なじみにしたのはなぜでしょうか。

 昔、やなせさんに「子どもの頃、どんな子でしたか?」と伺ったとき、「気が弱く、男の子らしい遊びはあまりせず、女の子の友だちと遊んでいた」とおっしゃったことが、強く印象に残っていたんです。生い立ちも複雑で、センチメンタルな詩をたくさん残していることを考えると、やなせさんは寂しかったのではないでしょうか。だから、元気のいい明るい女の子がそばにいてくれたら…という私の願望もあり、のぶと嵩を幼なじみにしました。結婚するところから物語を始めるやり方もありますが、2人の人生観がつくられた青春期をどうしても描きたかったんです。

-青春期という点では、2人が結婚に至るまでの恋模様なども気になるところです。

 私はラブストーリーを書くことが大好きなのですが、最近はご無沙汰していたので、久々の“大恋愛もの”ということで、楽しみながら張り切って書いています。また、やなせさんを語る上では戦争体験も外せません。やなせさんは激しい戦闘を経験したわけではありませんが、餓死寸前まで追い込まれたほどの飢えのつらさをさまざまな本に書き残し、「戦争は嫌だ」と言い続けていました。それが『アンパンマン』の誕生につながるので、そこはしっかり描くつもりです。

-やなせさんの人生は波乱万丈だったようですが、どのように物語を紡いでいこうとお考えでしょうか。

 お父さまを早くに亡くされるなど、やなせさんは若い頃からたくさんの別れや悲しい出来事を経験してきました。それでも、私が出会った頃のやなせさんは、冗談がお好きで、とても明るい方だったんです。そんなふうに、深い悲しみを何度も乗り越えた結果、『アンパンマン』が生まれたことを考えると、人生はつらいことがあるからこそ、楽しい物語が必要なんだと、やなせさんと暢さんはよく考えていたと思うんです。だから、私もそんなお2人の精神を受け継ぎ、序盤はつらいことが続く物語を、いかに楽しく、面白く、毎朝皆さんを元気づけるドラマとしてお届けするか、知恵を絞っているところです。キャストの皆さんも、そんな私の思いに応えてくださっています。

-最後に、作品を通じて伝えたい思いをお聞かせください。

 やなせさんが『アンパンマン』で世間に知られるようになったのは69歳のときですが、それ以前からすてきなお仕事をたくさんなさっています。その豊かな“やなせたかしワールド”を、ぜひ皆さんに知っていただきたい。そんな思いを込め、やなせさんの詩や言葉をあちこちにちりばめています。暢さんに関するエピソードも、すてきなものばかりなので、それを存分に生かして、イマジネーションを膨らませながら描いています。ぜひ応援していただけたらうれしいです。

(取材・文/井上健一)

(C)NHK

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

相葉雅紀「チームメイトの障がい者の皆さんから、ものすごい熱量を感じました」黒島結菜「相葉さんは本物の野球チームの監督のようでした」実際の障がい者たちとも作り上げた奇跡の物語『4アウト ─もう一度、プレイボール─』【インタビュー】

映画2026年11月3日

-お話を伺っていると、参加した皆さんが一丸となって作り上げたすてきな現場だったことが感じられます。 相葉 原作・脚本の平山讓さんは、取材から含めて30年くらいこの作品と向き合っていますし、稲垣(壮洋)監督も何年もの時間をこの作品に費やしてい … 続きを読む

山崎育三郎「一番、自分に近い存在」 ミュージカル「ファインディング・ネバーランド」が伝える「解釈力」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年10月31日

-改めて、この作品の魅力はどんなところにあると感じていますか。  僕は、生きていく中で「解釈力」が大事だなと思っています。生きているといろいろなことが起きますよね。大変な状況や苦しいこと、大失敗もある。でも、起こった事実は変えられなくても、 … 続きを読む

【映画コラム】10月の公開映画から

映画2026年10月31日

「クジラに落ちた男」(16日公開)★★★ 父を知り、父を乗り越える  巨大なマッコウクジラに丸のみにされた17歳のジェイ(オースティン・エイブラムス)が、亡き父の教えを頼りに脱出を図る。ブライアン・ダッフィールド監督が描くのは、「ピノキオ」 … 続きを読む

柳楽優弥「川栄さんと真剣に作品に向き合ってきた」川栄李奈「柳楽さんを信頼しています」共演4度目の2人が伝説的作品に挑む『RYUJI 竜二』【インタビュー】

映画2026年10月30日

-以前お話を伺った際、柳楽さんはご自身のお芝居について「以前は自分を役に寄せていくやり方をしていたが、『浅草キッド』の後からは、自分のパーソナルな部分を役に反映させて演じるようにしている」というお話をされていました。今回、竜二という役に対し … 続きを読む

横浜流星に「流星をよろしく」の声続々 『国宝』脚本家・奥寺佐渡子が「LOST10」で感じた愛される人柄【インタビュー】

ドラマ2026年10月30日

-小駒と直の掛け合いで工夫したことはありますか。  小駒と直は年齢も職業も育ちも違い、仲良くなれる要素も、バディになれる要素も全くないと思ったので、まず2人の共通点を考えました。刑事も保険調査員も、被害者や遺族が一日でも早く安心できるように … 続きを読む

page top