中園ミホ「皆さんに“やなせたかしワールド”を知っていただきたい」連続テレビ小説「あんぱん」脚本家が作品に込めた思い【インタビュー】

2025年5月1日 / 16:57

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶ(今田美桜)と柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語だ。脚本を手掛けるのは、「花子とアン」(14)、「西郷どん」(18)の中園ミホ。実は子どもの頃、やなせたかしと文通していたことがあるという。縁の深い人物をモデルにした物語に込めた思いを語ってくれた。

脚本家の中園ミホ (写真提供:NHK)

-第4週まで放送されましたが、作品をご覧になった感想はいかがですか。

 毎回、素晴らしい映像で、感激しています。魅力的な俳優の方々やさまざまなプロの手が加わり、私の頭の中で想像していたことの何十倍にも世界が広がっているので、「本当に私が書いた話かしら?」と驚くほどで(笑)。

-のぶと嵩を演じる今田美桜さんと北村匠海さんの印象はいかがでしょうか。

 お二人とも、すごくすてきです。今田さんとは民放のドラマでご一緒し、お人柄は知っていたので、ちょっと気の強いのぶを魅力的に演じてくれるはず、と信頼していました。でも、実際に作品を見たら、期待以上で。北村さんは、第1回の冒頭に登場した姿を見たとき、やなせさんそのままで、鳥肌が立つほど驚きました。それくらい、ご本人に雰囲気が似ていたんです。私の脚本の書き方は、頭の中にあるテレビモニターの中で、登場人物が動いたり、しゃべったりするのを書き取るような感じなので、お二人が演じるのぶと嵩を見て、役柄のイメージがどんどん膨らんでいます。ずっと見ていたいくらいです。

-ところで、中園さんはやなせたかしさんと子どもの頃、文通していたそうですね。

 私が小学4年生で父を亡くしたとき、「たったひとりで生まれてきて たったひとりで死んでいく 人間なんてさみしいね 人間なんておかしいね」というやなせさんの詩を読み、悲しみからすごく救われたんです。そこでファンレターを送ったことをきっかけに、文通が始まりました。当時、やなせさんは既にテレビに出るほどの有名人でしたが、手紙のお返事はものすごく速く、また、やなせさんが開催された音楽会に招いていただいたこともあります。お会いするたびにいつも「おなか空いていませんか?」と優しく声をかけてくださるんです。まだ『アンパンマン』を発表する前で、苦労はされているようでしたが、とても優しく、正直でまっすぐな方という印象でした。

-文通はいつ頃まで続いたのでしょうか。

 思春期を迎えた頃、申し訳ないことに私の方がお手紙を送るのをやめてしまったのですが、19歳のとき、道でばったりやなせさんにお会いしたことがあります。以前と変わらず優しく接してくださり、ちょうどご自身の出版パーティーに向かうところで、一緒に連れていってくださいました。ただそのとき、私の母が重い病気を患い、寝込んでいたので、事情を伝えて途中で帰ろうとしたら、会場から母に電話し、励ましてくださいました。その後、母も亡くなりましたが、そういう意味では、私は二度もやなせさんに救われているんです。

-中園さんご自身がやなせさんの影響を受けている部分もあるのでしょうか。

 私は子どもの頃から詩を書いていましたが、それもきっと、やなせさんの影響なんですよね。それがものを書くことの原点で、最終的に脚本家になったことを考えると、やなせさんが私を作ってくださったんだなと、今改めて感じています。しかもここ数年、嫌な出来事が続く世の中を見ながら、「やなせさんが生きてらしたら、なんておっしゃるだろう?」と考えていたんです。そういうタイミングで、こんな機会をいただき、時々まるでやなせさんが私にこの作品を書かせてくださっているような感覚になることがあります。

(C)NHK

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(12月5日公開)  太平洋戦争末期の昭和19年。21歳の日本兵・田丸均(声:板垣李光人)は、南国の美しい島・パラオのペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才能を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族 … 続きを読む

氷川きよし、復帰後初の座長公演に挑む「どの世代の方が見ても『そうだよね』と思っていただけるような舞台を作っていきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月29日

 氷川きよしが座長を務める「氷川きよし特別公演」が2026年1月31日に明治座で開幕する。本作は、氷川のヒット曲「白雲の城」をモチーフにした芝居と、劇場ならではの特別構成でお届けするコンサートの豪華2本立てで贈る公演。2022年の座長公演で … 続きを読む

岸井ゆきの「夫婦の“切実さ”が描かれている」宮沢氷魚「すごくやりがいがありました」すれ違っていく夫婦役で初共演『佐藤さんと佐藤さん』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 大学で出会った佐藤サチと佐藤タモツはたちまち意気投合し、一緒に暮らし始める。ところが卒業後、弁護⼠を⽬指すタモツは司法試験に失敗。独学を続けるタモツに寄り添うため、サチも司法試験に挑むが、数年後、合格したのはサチだった。結婚、出産を経て弁 … 続きを読む

28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 プロ野球、阪神タイガースの将来を担う選手として期待されながらも、21歳で脳腫瘍を発症して引退、その後も病気と闘いながら講演会活動などを続け、2023年に28歳で亡くなった横田慎太郎の生きざまを描いた『栄光のバックホーム』が、11月28日か … 続きを読む

吉高由里子「忘れかけていたことをいきなり思い出させてくれる」 念願の蓬莱竜太と初タッグ パルコ・プロデュース2025「シャイニングな女たち」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月28日

 吉高由里子が2022年の「クランク・イン!」以来、3年ぶりに舞台主演を果たす。吉高が挑むのは、日常に潜む人間の葛藤や矛盾を丁寧にすくい取り、鋭い視点の中にユーモアを織り交ぜる作風で共感を呼んできた蓬莱竜太が描く新作舞台、パルコ・プロデュー … 続きを読む

Willfriends

page top