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NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、4月20日放送の第16回「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」で大きな転機を迎えた。強い影響を受けた稀代の天才・平賀源内(安田顕)を失った蔦重は、これからどのような道を歩んでいくのか。チーフ演出を務める大原拓氏が、ここまでを振り返ると共に、今後の展望を語ってくれた。

(C)NHK
横浜さんは、役に対する入り方が繊細かつ大胆な印象です。蔦重はどう生きているのか、どう動いているのか、どうしゃべるのか、どんな距離感で話すのか。そういったことを含め、台本の余白の部分を自分なりに考えて埋め、人物をより立体的にしてくださるんです。そのアプローチの仕方が、とても魅力的です。
しかも、普通は役者の方それぞれに、「このお芝居がこの人の魅力」という部分があるものですが、横浜さんの場合、ご本人はあくまで真っ白いキャンバスのような感じで、相手によってどんな色にも、どんなものにも変わるんです。そこも大きな魅力です。それと、僕が好きなのは、横浜さんの笑顔です。横浜さんの笑顔を見ると、元気になるんですよね。なぜあんなすてきな笑顔ができるのかと、不思議に思うくらいで。撮っていると、より一層それを強く感じます。
第10回で、身請けされて吉原を去る瀬川(小芝風花)へのはなむけとして、蔦重が作った女郎の絵姿を描いた本を贈る場面がありました。このとき、横浜さんは「(吉原を)女郎がいい思い出いっぱい持って、大門出ていけるとこにしたくてよ」という蔦重が夢を語るせりふを、窓を開けて外に向かって大声で言ったんです。僕はあそこは、きちんと向き合って言うんだろうな、くらいに考えていました。でも、横浜さんはああいった表現をして、その後の瀬川に向けて語る言葉までの間にメリハリをつけてくださって。つまり、大事なせりふにどんな形でアプローチするのがベストなのか、ものすごく深く考えてくださっているんです。あの場面では、それを実感しました。
素直に読んで面白いですし、森下さんの脚本は、画が思い浮かぶのが特徴です。多分、それは俳優の方々も同じで、自分の役のイメージがつかみやすく、お芝居もやりやすいのではないでしょうか。その一方で、「ここは監督や俳優の方々にお任せします」という余白の部分も残しているんです。そこからは逆に「どんなふうに見せてくれるだろう?」という森下さんからわれわれへの期待が感じられます。俳優の皆さんが生き生きと演じられる理由の一つは、そんなところにもある気がします。

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そうですね。例えば、第10回の花嫁姿の瀬川(小芝)の花魁道中の場面は、脚本には「歩いている」などと簡単なことしか書かれていないんです。それを具体的に画(え)にするのが僕たちの仕事なので、どんなシチュエーションで、どう見せるのか、知恵を絞らなければいけません。そういう苦労はありますが、それは先ほどの“余白”と同じような話で、共に作っているという手応えを感じられるので、とても楽しいです。ときに悲痛な展開もあるため、SNS上では視聴者の皆さんから悲鳴が上がることもあるようですが、森下さんらしいドラマチックな展開は、今後もまだまだ待っています。ぜひご期待ください。
僕たちは、第16回までが蔦重の青年期で、これからは壮年期に入っていくと考えています。蔦重はこれまで、いちずな思いを基に行動してきましたが、それは裏返せば「子どもっぽさ」とも言えます。これからは、いろんな人と出会い、関わることで、彼が本当にやるべきことを見いだしていく展開になっていきます。そのベースにあるのは、平賀源内から託された「書をもって世を耕す」という思い。第16回でも須原屋市兵衛(里見浩太朗)と話していたように、源内の心を生かし、伝え続けるため、本を出版することへの思いがより強くなっていきます。しかしその前には、さまざまな困難も待っています。その中で、蔦重がどんなふうに成長していくのか。そこが大きな見どころです。
福原遥さん演じる花魁の誰袖(たがそで)と橋本愛さん演じる本屋の娘・ていの2人が、蔦重に大きくかかわってきます。2人とも瀬川とは全く異なるアプローチになるので、蔦重と彼女たちのかかわりも楽しんでいただければと思います。基本的に蔦重は、女性の気持ちがわからない男で、人間的に成長しても、そこは変わりませんので(笑)。これからも、応援よろしくお願いします。
(取材・文/井上健一)

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