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彼女はもともとフィジカルは強かったのですが、柔道の経験は全くなかったので、ロサンゼルスで柔道のチャンピオンから半年間みっちりとトレーニングを受けて、リハーサルもたくさんした後で撮影しました。彼女が戦う相手は本物の柔道家たちでしたが、皆から「本当に今まで柔道をやったことがなかったの」と驚かれるぐらいの仕上がりでした。
あの瞬間、レイラは息が詰まっているし、すごいプレッシャーを感じています。だからヒジャブを取るのは、自由を手にしたいという思いの表われです。あのシーンはザーラをはじめとするイラン側の女性たちのアイデアでしたが、ヒジャブを取った時に髪を後ろでまとめてアップにするという動きは、イランの女性たちにとっては革命の合図というか、シンボルなんだそうです。だからヒジャブを取ったことよりも髪をアップにすることの方に政治的なメッセージが込められているのです。
最初は、うまくいかないこともあるかもしれないと思っていました。でも、実際に映画を撮り始めたら最高でした。例えば、僕がモニターで絵を見ていると、彼女がペルシア系やイランの役者さんたちを演出してくれる。ストーリーテイクが終わると、思っていることを2人で何でも話し合うみたいな感じでした。僕にとっては、主人公がイランの女性であることがとても重要だったので、ザーラの言葉にはしっかりと耳を傾けるようにしました。ちゃんとリアルなものとして描けているかというリアリティーのバロメーターに彼女がなってくれました。脚本やビジュアルに関しても、彼女が関わってくれたことで、より立体的で深いものになったと思います。
僕は、アートは有害な政府に勝つことができると信じています。例えば、僕とザーラは子どもの頃からあいつらは敵だと言われて育ってきました。でも、政府が敵だと勝手に決めつけた僕らが、こうしてコラボレーションをして皆さんに映画をお届けできたということは、ヒーリングというか、傷を癒やすことにもつながっていくと思っています。なので、もっとこういうことが増えるとうれしいです。政府は相手の国の人のことを嫌え、敵対しろと言いますが、実際に会ってみたら憎しみなんかないし、僕らは素晴らしい友情で結ばれている。この映画はそうした愛をお見せしています。日本の観客にもそれが届いてほしいです。政府が何かを言ったとしても、あるいは自分とは何かが違うと思う人がいたとしても、それをボイコットするのではなく、やっぱり実際に会ってみることが大事です。会ってみれば、もしかしたら僕らのように最高の友人になれるかもしれません。面白いことに、今年のアカデミー賞のドキュメンタリー映画の部門にパレスチナ人とイスラエル人が監督をした『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』がノミネートされています。このように僕らにとってアートは武器なので、これからも僕たちは映画を使って戦っていきます。
(取材・文/田中雄二)

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