「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

2024年4月18日 / 10:00

-近くで監督を見ることで、演技的には助かったこともあるのですか。

 そうですね。こんな感じかなというのはありました。でも、監督っぽい人をやろうという意識は全くなかったです。桐子は映画を撮りたい人で、それで監督になったというだけなんだと思っていたので。だから「監督ってこういう人だよね」という感じはなくて、ただ自分がやりたいことで頭の中を100パーセントいっぱいにしている人が、監督と言われているだけなんだと。だから別に何かを参考にしたわけではないし、監督も「桐子が私に似ているって思うところがあるかもしれないけれど、別にまねしなくていいからね」と言っていました。

-現場の雰囲気はいかがでしたか。

 今回は、監督以外の藝大の皆さんとも一緒に仕事をしましたが、もちろん年齢もバラバラだし、出身も違うんだけど、皆さんが一つのものを一生懸命作ることに集中してやっている感じがしました。だからエンディングが近づくに連れて、桐子的にも、個人的にも、みんなで一緒に頑張ったよねみたいな気持ちが湧いてきました。

-劇中の桐子の映画は完成したんですよね。

 おかげさまでロードムービーができました。それに関しては、自分で別の脚本を書いてみました。こんな映画にするんだみたいなものを。それを撮影前の準備段階として早織さんとも共有して、桐子はこういう作品を撮ろうとしていると自分で考えてみました。それが映画の中に生かされたかどうかは分からないけれど、自分の中に何かがあった方が演じやすいし、私と早織さんとの間にも共通の何かがあった方がいいと思ったので。

-「走れない人の走り方」というタイトルに込められた思いについて、どのように感じましたか。

 このタイトルは、ちょっと自虐的というか、マイナスっぽいと思われるかもしれませんが、そうではなくて、誰しも日々の生活があってそれぞれの毎日を進んでいますが、その進み方はさまざまで映画を撮るために必死に生きる桐子の進み方はこれなんだ、ということです。それは「他の人と違っていてもいいよ」という意味にもつながるのかなと思いました。

-映画の見どころも含めて、観客へのアピールをお願いします。

 映画体験としてすごく楽しいと思います。普通は、誰もが「この映画はこの人の話なんだろうな」って分かるじゃないですか。でもこの映画は、予想とは全く違う世界を映すんです。実際、映画を見ていると、主人公がちゃんと真ん中にいて、そこにはすれ違う人がいて、受付をやっている人がいてみたいに、いろんな人が出てくるけど、彼らの話は始まらないですよね。けれどもこの映画は、予期せぬタイミングでカメラが全然違うところに付いていったり、急に全く知らない人が画面に入ってきたりもします。簡単に言えば、すごく自由だなと思っていて、自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います。それは多分、監督やカメラマンをはじめ、現場のスタッフの皆がそういう気持ちを持っていたからだと思います。そこにある現実をただ映しているだけじゃない、映画だからできることみたいな自由さがすごく楽しいと思ったので、観客の皆さんにもそこを楽しんでほしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 東京藝術大学大学院映像研究科

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「豊臣兄弟!」第26回「信長を笑わせろ!」 人間ドラマと華やかなエンターテインメントが一体になった大河ドラマならではのエピソード【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年7月10日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。7月5日放送の第26回「信長を笑わせろ!」では、小 … 続きを読む

花總まりがアガサ・クリスティに 失踪の謎を追うミュージカル「AGATHA(アガサ)」で「ミステリーの世界を体感していただけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年7月9日

 イギリスを代表する推理小説家で“ミステリーの女王”と呼ばれたアガサ・クリスティが失踪した実話を元にしたミュージカル「AGATHA(アガサ)」が7月18日から上演される。本作は、アガサ・クリスティが失踪した11日間の謎を追う物語。現在(19 … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#セブチを見ていると分かる、韓国の年齢の不思議

2026年7月8日

▽タメ口は崩せる、でも「ヒョン」は残る  日本でも、兄弟や親しい先輩後輩のあいだでは、呼称は残したまま口調だけくだけることがある。「お兄ちゃん」と呼びながらタメ口で話すこともあれば、「先輩」と呼びながら冗談を言い合うこともある。  もう少し … 続きを読む

小栗旬「織田信長は、気づいたら“破壊神”になっていた」“本能寺の変”迫る!【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年7月5日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 20:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄の秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。7月12日放 … 続きを読む

唐沢寿明「原点回帰をした感じがしました」『トイ・ストーリー5』【インタビュー】

映画2026年7月3日

-唐沢さんがこのシリーズに感動するポイントはどこにありますか。  やっぱりおもちゃにも出会いと別れがあるという、人間の世界と同じようなストーリーを入れているところかな。愛されていたのに捨てられたとか、おもちゃの側に立つとそれは悲しいことだろ … 続きを読む

page top