「自由に映像を撮れることを楽しんでいる作品だと思います」 山本奈衣瑠『走れない人の走り方』【インタビュー】

2024年4月18日 / 10:00

 映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督が、卒業制作として手掛けた長編デビュー作『走れない人の走り方』が4月26日から公開される。本作で主人公の映画監督を演じた山本奈衣瑠に話を聞いた。

山本奈衣瑠(メーク:kika/スタイリスト:佐藤奈津美)(C)エンタメOVO

-まず、この映画に出演することになった経緯からお願いします。

 この映画の前に、(蘇鈺淳)監督が『鏡』という短編作品を作った時に初めてご一緒しました。ただ、藝大のような学校関係の映像作品には出たことがなかったし、私は大学には行っていないし、映像関係の学校の情報も全く知らなかったので、どういう環境で撮影するのだろうと思っていました。それで、監督と初めて会った時に、とてもすてきな方だったし、面白そうな脚本が届いたので、「やります」と。その後、監督から「年末に長編も撮るので、また一緒にやってくれませんか?」と言われて。だから今回の話ができる前からやることが決まっていた感じですね。

-では、脚本もだんだんと変わっていった感じですか。

 ベースは変わってないですが変化の過程は見ていました。初めて脚本をもらった時から、監督と脚本家のお二人とはお互いに意見を出し合うような、確認のラリーをずっとしていました。決定稿が出来るまで一緒に作っていった感じです。だから、キャストをどういう人にするかも一緒に考えました。

-監督の前で監督を演じるというのはどんな感じなのでしょう。何か不思議な感じがしましたか。

 不思議なところもありましたが、「監督ってめっちゃきつい」と思いました。みんなから「この後どうするの?」と常に聞かれるわけじゃないですか。一応プロデューサーや助監督の方もいるけれど、監督が何十人かの人を仕切って、結局どうしたいのかは監督が決めるわけですから。監督がすごく明るい人だったら現場も明るくなるし、落ち着いていたら現場もそうなるし、人間の体で言えば監督が脳みそ。だからそれを思ったら、「えっ、私がそれをやるの。桐子ってめっちゃつらそうで大変そう」と思いました。大変というのは、この子が抱えている問題のことです。でも大変だからこそ迷いがあって、だからこそ頑張っているとも言えます。その必死さみたいなものは、すごく演じがいがあると思ったし、一生懸命さみたいなところや、それがうまくいかないところなどは、自分ともちょっと似ているかなと思ったので、桐子と一緒に走っていこうと思いました。

-桐子にはちょっと自分勝手なとこもありますが、共感できましたか。

 割と共感できました。確かに、桐子は自分勝手だと思う。でも私にも、こだわりが強いとか、譲れないことが多いなど、自分勝手なところはあります。その分、自分にはない考えを持っている早織さんが演じたプロデューサーや周りのみんなには感謝しなきゃいけないと。そんな気持ちはありました。

-監督には映画を撮る喜びとプレッシャーがあると思いますが、演じていてそうしたことを感じたりはしましたか。

 どうですかね。でも、自分が桐子をやりながら監督を見ていて思ったのが、「まさに桐子と同じことを言われている」と(笑)。自分が違う現場に行った時に「あっ桐子だ」と思う人がいたりもしました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top