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「このドラマでは東京がメインキャラクター」「これからどうなるのって、1週間ドキドキ、イライラしながら待つ時間を過ごしてほしい」アンセル・エルゴート、渡辺謙「TOKYO VICE Season2」【インタビュー】

 WOWOWとHBO Maxによる日米共同制作のドラマシリーズ「TOKYO VICE」のSeason2が、4月6日(土)からWOWOWで日本独占放送・配信開始となった。1990年代の東京を舞台にしたこのクライムサスペンスで、主人公の新聞記者ジェイクを演じたアンセル・エルゴートと、刑事の片桐を演じた渡辺謙に話を聞いた(なお、アンセルは通訳なし、全編日本語でインタビューに挑んだ)。

渡辺謙(ヘアメーク:倉田正樹<アンフルラージュ>/スタイリスト:JB)とアンセル・エルゴート(ヘアメーク:金沙知) (C)エンタメOVO

-まずアンセルさん、前回インタビューをした際に、「一番の見どころは渡辺謙さんとのシーンで、一緒に仕事ができてとても幸せだった」と言っていましたが、今回はいかがでしたか。

アンセル 関係性はもっとよくなりました。

渡辺 もっとよくなったんで、幻滅しなかった?(笑)

アンセル 4年間は、僕のキャリアの中でも一番長い関係ですから、また謙さんと一緒に仕事ができて本当に感謝していますし、とても幸せでした。

-渡辺さんはいかがですか。

 最初の時は、コロナの影響が非常に強くて、撮影自体が困難な状況でした。でも、それはそれですごく結束力が高まった撮影ではありました。シーズン2はそういう束縛がなくなったので、より自由に、リハーサルの段階から通常のプロセスで撮影をすることができたので、そういう意味では冗談も言い合えましたし、楽しい時間が過ごせました。

-コミュニケーションももっと密になった感じですか。

アンセル 例えば、別々のシーンの撮影の日に、謙さんに「来週の撮影で日本語のせりふがあるんですけどどうしましょうか」と聞いたりして…。

渡辺 お互いにどこを日本語でやるか英語でやるのかを、早く準備をして決めておかないと、僕らもコンフューズ(混乱)するんです。だからその辺は、ちょっと会った時とかLINEでも、「あのシーンなんだけど、俺はここからここまでを日本語で言いたいから、その後はずっと英語でやるのはどう?」などと打ち合わせもできたので、オンキャメラ以上に密な関係ではありました。

-前回、アンセルさんに話を聞いた時に、「実際に日本に住んだことがこの役にとても役に立った。もっと日本語も勉強したい」と言っていましたが、今聞いたら日本語がさらにうまくなっていて驚きました。シーズン1と2の間も日本にいたのですか。

アンセル シーズン1と2の間に、ちょっとだけ日本にいました。ずっと日本語の先生とZOOMで勉強して、それでシーズン2が始まるかなり前にまた来ました。でも僕の日本語はまだまだです。

渡辺 彼は、撮影が1週間ぐらい空いたり、他のシーンを撮ったりしている時は、日本のあちこちを旅行していましたから。撮影をしている中にいると、そんなに話が広がっていかないけれど、いろんな所に旅をして、いろんな人と会ってしゃべっているので、初めて触れる言葉とか違う内容の話をいっぱい聞くわけです。それでうまくなっているんだと思います。

-渡辺さんも、ハリウッドで仕事をしているので、英語と日本語の違いや難しさは分かると思いますが、彼の日本語の上達ぶりはすごいですよね。

渡辺 日本語はすごく難しいですよね。英語が簡単かと言うと、僕にとっては簡単ではないんだけど(笑)。日本語にはいろんなレイヤー(階層)があるじゃないですか。例えば、警察用語も、やくざの言葉もジャーナリストの言葉もあるし、いろんなジェネレーションも含めて、使うワードも違うわけです。その中には敬語もあれば、数のカウントの仕方も違う。そういう非常に難しい言語なので、とにかくしゃべり続けることが必要だと思うんです。その点でも、彼はスタッフともできるだけ日本語でしゃべるようにしていましたね。

-このドラマの舞台が1990年代の日本で、東京の闇や裏社会が出てきますが、何か東京が別の街に見えるようなところがあります。それはやはり外国のスタッフが撮っていることが大きいのでしょうか。また、このドラマが描いたテーマについてはどう思いますか。

渡辺 撮影監督も脚本家も日本人ではないので視点が違うというのはありますよね。ただ僕は、90年代というのが非常に興味深く、面白い年代だったと思うんです。みんなが心のどこかにわだかまりや闇を抱えている。まだまだ旧時代のアナログ的な精神構造や社会構造、しがらみも抱えている。このドラマは、そういう中で起こるクライムサスペンスなので、もしかすると今の時代のゆがみみたいなものの原点がここにあるような気がするんです。加えて、ある種のノスタルジーもあるし。われわれがちょっと道を間違えたかもしれない原点がここにあるかもしれないというのが、このドラマ全体の大きなフレームの一つなのかもしれないと思います。

 結局、今まで日本ではこういう問題はあまり描けていなかったと思います。例えば、政界と裏社会、危ない宗教とのつながりとか。だからこのドラマは目新しいように見えるけど、「社会ってこんなもんだよね」という話です。そういう意味では、いわゆるジャポネスクみたいなことではなくて、本質的なものにやっと切り込み始めたんだと思います。こういう問題は世界のどこにでもあるわけです。例えばアメリカは政界と製薬会社の癒着などを平気で映画で描くじゃないですか。でも日本ではなかなかそこまで踏み込めないし、切り込めなかった。でもそれを、フィクションではありますが、こうやって切り込んでいくという点では、目新しいドラマになっているのかもしれないです。

アンセル 90年代の東京は舞台としてすごく面白いです。僕が初めて日本に来た時に、ここで撮影するイメージはすごくいいと思いました。だからこのドラマでは東京がメインキャラクターですから、すごくいい作品が作れると思いました。台本の中のジェイクは、面白いシーンにたくさん関わっていたので、俳優にしてはすごくやりがいを感じました。ほかの作品では、2、3週間のクールの中で、走るだけ、撃つだけ、運転するだけということもありますが、この作品ではそれは全くありませんでした。

-最後にドラマの見どころをお願いします。

渡辺 僕ら出演側の人間が1回ごとに台本もらってびっくりしたんです。「えーーーっ!」 みたいな。だから、その驚きは必ず視聴者にも届くと思います。1話で完結する話ではなくずっと話が転がっていって、雪だるま式にどんどんと膨れ上がっていくし、ゆがんでいく…。これからどうなるのって、1週間ドキドキ、イライラしながら待つ時間を過ごしてほしいですね。10本全ていけていると思います。

アンセル あなたはまだ3話までしか見ていないんですよね。では、4話から10話までが見どころです。ごめんなさい(笑)。

渡辺 こういうやつですよ(笑)。

(取材・文・写真/田中雄二)

Photo: James Lisle/WOWOW

 

ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE Season2』

WOWOWにて4月6日(土)スタート。毎週土曜午後9時放送・配信(全10話)〔第1話無料放送〕※WOWOWオンデマンドで、Season1全8話配信中。

公式Instagram(@wowow_tokyovice)

 

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